こんにちは、もりのひつじかいです。
今日は
『星の王子さま』
(サン=テグジュペリ作/内藤濯訳/
岩波書店/1962年)を取り上げます。
キツネが王子さまに贈った
2つの名言をテーマに
話しをすすめていこうと思いますが
その前にひつじかいの体験を
少しだけシェアさせてください。
『星の王子さま』との出会いに関わる
とても大切な部分ではないかと考えます。
本当のことを言いますと
ひつじかいはこのお話しを
昨日読みえ終えたばかりなのです。
手元にある本の奥付を見ますと
1988年第45刷とありますので
なんと32年もの時をかけて
「ひとつの物語を読了した」
ことになります。
いったいなぜ
こんなにも膨大な時間が
かかってしまったのでしょうか?
それは・・・
*すっかり子ども向けのお話しだと
思いこんでいた。
*ちょっと理屈っぽい童話ではないかと
勘ぐっていた。
*いい年をして読むのは、なんだか
恥ずかしいなという思いがあった。
*まわりの評判があまりにもいいので
かえって反発してしまった。
など
いくつかの理由が
挙げられるかと思います。
しかし
一番大きな理由は
『星の王子さま』を手に取り
素直に開いてみようという
「ピュアな子ども心を喪っていた」
ことにあるのではないかと思います。
「思います。」というのも変ですね。
この本を読み終えて
初めてそのことに気がついた
といった方が正確かもしれません。
本を購入した年から数えると
32回も馬齢を重ねて
「ようやく子ども心に近づいた」
ということでしょうか。
こんなことを言い張ってみても
あなたを説得させる材料には
ならないかもしれませんが
そういう不思議なことが
なぜか起こったのです。
今回は
こうしたひつじかいの
「星の王子さま体験」を踏まえながら
キツネが王子さまに贈った
2つの名言を中心に
〈星の王子さま〉という迷宮
ラビリンスを
旅してみたいと思います。
あなたは「箱の中のヒツジ」を見ることができますか?
『星の王子さま』には
この※物語を象徴するエピソードが
冒頭近くに出てきます。
それが「箱の中のヒツジ」です。
※ひつじかいは『星の王子さま』を
「童話」というカテゴリーに
くくることができません。
かといって「小説」とも
呼びたくはありませんので
「物語」という言い方で統一します。
王子さまは「まるっきりの子ども」
それもピュアな子どもですから
一度何かを尋ねたりお願いし始めると
相手が返事をしたり
あるいは完成させるまで
決してあきらめないのです。
そんな王子さまにせっつかれるまま
王子さまとは初対面となる大人
つまりこの物語の語り手〈わたし〉は
突然ヒツジの絵を
書かされるはめになるのでした。
そのヒツジを王子さまはどうしたいのか
などという話しをしていますと
収拾がつかなくなってしまいますので
ここでは割愛しますが
〈わたし〉は
なんとかヒツジの絵を書き上げます。
ところが
なかなか王子さまの気に入るようには
書けません。
何度も書き直しをしているうちに
〈わたし〉は少しイラついてきて
箱に3つの小さな穴のあいた絵を書き
「君の欲しいヒツジはこの中にいるよ!」
と言って投げつけるように渡すんですね。
するとどうでしょう。
王子さまの顔がぱっと輝き
「うん、ぼく、こんなのが
欲しかったんだ」
てなことになるわけです。
「ピュアな子ども」である
王子さまには
その箱の中にいるヒツジが
「見えた!」ということなんです。
箱には
小さな穴があいているだけですから
そこから中を覗き見しない限りは
本当にヒツジがいるのかどうかなんて
分かるものか!
というのは「大人の理屈」。
子どもにそんな理屈など
まったく必要ないということなんですね。
これはひとつのエピソードですが
『星の王子さま』という物語は
じつはこのような
大人の理屈では「中が見えない」
子どもの理屈
子どもの心で書かれた物語なんです。
だから
この物語が分かった!
箱の中が見えた!
感動した!
ということは
子どもの心を取り戻したといっても
過言ではないのかなと思うのです。
ただしそのためには
矛盾するようですが
年を重ねなければならない
のかもしれませんが・・。
星の王子さまにキツネが伝えた名言とは・・
前フリが
おそろしく長くなってしまいましたが
いよいよ
ここから本論に入りたいと思います。
本当の話し相手(友だち)をさがして
地球にやってきた王子さまは
この星で-
わたし(飛行機乗り)と
転轍手(てんてつしゅ)と
あきんど
それからヘビとキツネ
あとは5千本のバラの花に
出会います。
その中でも「特に大切な話し」を
王子さまに伝えるのが
キツネなんですね。
作者サン=テグジュペリは
フランス人ですが
彼が生まれ育ったヨーロッパでも
キツネは「ずる賢い」動物の代表として
認識されています。
その「ずる賢い」とされるキツネに
あえて大切な言葉
今や名言とまでいわれる
かの有名な言葉を言わせています。
こんなところにも
「大人の理屈」では見えない
『星の王子さま』という物語の骨頂が
現れているのではないでしょうか。
さて
その言葉を次に写してみますね。
心で見なくちゃ
ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは
目に見えないんだよ
内藤濯訳(岩波書店)から抜粋
いかがでしょうか?
いたってシンプルですよね。
キツネが言いたかったことを
少し補足させてもらうとするならば
こんなふうになるでしょうか。
大人っていういきものは
なんでも目に見えると思っている。
目に見えないものは
この世に存在しないのだと
考えている。
でも
子どもは知っている。
かんじんなことは
目には見えないんだっていうことを。
心で見なくちゃ
本当のことは見えないんだ。
キツネはこの言葉(名言)を
星の王子さまへの贈り物にしました。
王子さまはその言葉を復唱して
胸に刻み
さっそく〈わたし〉に向かって
使ってみたりもするのです。
キツネが伝えた2つ目の言葉!
この言葉は
あまりにも有名になってしまいましたが
キツネは
もう一つ大切な話しをしていると
ひつじかいは考えています。
それが-
「めんどうみた相手には
いつまでも責任があるんだ」
というくだりです。
ここだけを取り上げてしまうと
少し分かりづらいかもしれませんので
キツネのこの言葉が
どんな文脈の中で語られたのか
ということを
少し解説しておきますね。
星の王子さまは自分の故郷の星に
とても気になる花を残してきました。
それは1本のバラの花です。
なぜその花が気になるのか
故郷にいた頃には分からなかったのです。
でもこうして
地球まではるかな旅をして
「気になる」というのは
じつは「愛」であったということに
思い至るわけです。
そうして
バラの花を頻繁に思い出したりします。
キツネは王子さまに向かって
バラの花を大切に思う
本当の意味を教えるのです。
それは君が
「そのバラの花のために
ひまつぶしをしたからだ」
というのです。
自分の時間を使って
バラの花にひまつぶしをしてあげた。
別の言い方をすれば
バラの花と交流をしてあげた。
極言すれば
バラの花と友だちになった
ということです。
だから君は
バラの花を大切に思っているんだと。
これは人間としてとても大切なことだと
キツネは言います。
ところがこんな大切なことを
ほとんどの人間が
忘れてしまっているとも。
「めんどうみた相手には
いつまでも責任がある」
だから
忘れてしまってはいけないんだ。
それは
バラの花と君との大切な約束なんだ
とキツネは言うんですね。
キツネのこの2つ目の言葉というのは
先の名言以上にに重要ではないかと
ひつじかいは感じました。
めんどうみた相手
こころをかけた相手には
いつまでも責任があるというこの部分。
これはバラの花に限らず
あなたが育てている花や植物
樹木や家庭菜園
あるいはさらに広げて
ペットや家族
そして友人に至るまで
適用される言葉だと思うのです。
たとえば
もっともっと拡大して
めんどうみた相手が国だとしたら
いつまでも責任があるという部分には
とても意味深いものがありますね。
こうした理論も大人の理屈では
本質を見ることができないかも
しれません。
キツネの
この2つ目の言葉(名言)は
もっともっと注目しなければいけないと
ひつじかいは感じています。
たった一人に向けて書かれた物語
童話でも小説でもない物語
まさに『星の王子さま』としか
言いようがないこのお話しは
じつは
たった一人のひとに向けて
書かれたものです。
そのたった一人のひとというのは
作者の親友です。
キツネの言葉を借りるならば
さしずめ
「ひまつぶしをした友人」
ということにでもなるでしょうか。
たった一人のひとに向けて書かれた
物語が世界中に拡散し
物事を心で見ることができる
子どもたちや
物事を心で見ることができる
稀有な大人や
めんどうをみた相手に
いつまでも責任を感じ
心を寄せ続けることができる
そんなピュアなひとたちによって
大切に語り継がれています。
ここに
創作というものの本質が
隠されているように思います。
たった一人のひとに向けて書くことこそ
創作の原点だと
言えるのかもしれません。
もちろん
「かんじんなことは目に見えない」
という子ども心・あそび心を
踏まえたうえでの創作ということですね。
『星の王子さま』という
稀有な物語を読んで
ひつじかいが感じたことは以上です。
あなたが
まだ
星の王子さまに出会っていないのならば
幸いです。
だって
こんな素敵な子どもと出会うという
大きな楽しみが
待っているのですから。
星の王子さまに出会ったら
キツネの名言について
思い出してくださいね。
それは1つではなく
2つあるのだということを・・。
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