ジェンダー観が古めかしいって?『いやいやえん』も早や還暦!

男女をモチーフにしたサイン 童話・ファンタジーほか
ジェンダー観は古くなる

こんにちは、もりのひつじかいです。

ファンタジー『いやいやえん』の表紙

久しぶりに
中川李枝子さんのファンタジー
『いやいやえん』(福音館書店)を
読み返してみました。

そのときの印象は
「なんだか昭和っぽいな」
「ちょっと古めかしいぞ」
というもの。

それもそのはず
この本が発行されたのは
1962年(昭和37年)のこと。

そろそろ還暦を迎える年回り。


だけどいくら古くても
古さを感じさせないファンタジーだって
世に存在しているはずなのに
どうしてこのお話しには
古さを感じてしまうのでしょうか?


とそんなことを考えながら
Amazonのカスタマーレビューを
ながめていたら
ジェンダー(社会的性差)について
言及している投稿がありました。


なるほど、ジェンダーか・・
ひつじかいが「昭和っぽい」と感じたのは
まさにその部分だったのかもしれません。


でもそれならば、どうして
『いやいやえん』ばかりが・・

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ジェンダー観ってそもそも何?

ジェンダー観を問う前に
まずはジェンダーそのものについて
確認しておきたいと思います。

ジェンダーとは・・

生物学的な性別を示すセックスに対して、
社会的・文化的に形成される性別。
作られた男らしさ・女らしさ。
(広辞苑から引用)

「社会的・文化的に形成される性別」
というところがポイントですね。

この点を押さえたうえで
さて〈ジェンダー観〉とは・・

ひつじかいの解釈では

その時代、時代の
社会的・文化的視点に立脚した
〈ジェンダー〉に対する観念(考え方)

ということになるのではないでしょうか?

言葉を替えて言えば
〈ジェンダー観〉とは
今日のわたしたちが
男女の性差をどのように捉えているのか
という〈社会的尺度〉のことではないか
と考えます。

『いやいやえん』というファンタジ-は
そういう観点からながめてみると
冒頭にも書いたとおり
「なんだか昭和っぽいな」
「ちょっと古めかしいぞ」
ということに
なってしまうのだと思うのです。

ではその古めかしいという感じですが
具体的にどういう場面に現れているのか
作中からピックアップしてみましょう。

女の子の服なんか!

子供服をおしゃれに着こなす女の子と男の子

いたずらがやまない主人公(しげる君)
を少しこらしめるために
『いやいやえん』のエピソードの一つに
「彼が言葉を発するたびにクラスメートの
女の子に似てきちゃう」という
寓意的なパラグラフが挿入されています。

しげる君は自分の意に反して
とうとうスカートまで履かされるはめに
なってしまいます。

この場面
まわりの友だちの感想は
はっきり書きとめられてはいませんが
しげる君の立場として
「とてもきまりが悪い」ということが
語られています。

作者はこの場面でー

女の子の恰好をさせられて
→とてもきまりが悪い。

というジェンダー観を
披露してみせたのです。

しかしこのジェンダー観
60年も前の〈尺度〉ですから
今日的観点からすれば
しげる君が思い悩むほど
「ひどくはないんじゃない?」
ということになってしまいそうです。

しげる君は別の日にも
お姉さんの「おさがりはいやだ」
といって駄々をこねます。

ここでも彼は
「女の子の服なんか」着たくないと
文句を言うのです。

(男が)女の服なんか着れるわけがない!
というジェンダー観を
しげる君は体現しているわけです。

赤は女の子の色だから・・

ジェンダー観が
一番はっきりと現れているのが
次のエピソードでしょうか。

パパが買ってきた赤いおもちゃの自動車

ある日パパがしげる君へのお土産に
赤い色の自動車を買ってきたのです。

60年前の自動車ですよ!
これはたいへん貴重なおもちゃです。

ところがしげる君は憤然として
「女の子の色の自動車なんかいやだ!」
とこれまた駄々をこねるのですね。

ここでも

赤い色
→女の子の色

というジェンダー観が用いられています。

フェラーリという
高級スポーツカーが採用している色は
赤、ですよね。

今の男の子たちで
「赤い自動車はいや」なんていう子は
ほとんどいないでしょうね。

 

と、ここまで
『いやいやえん』のジェンダー観に関し
2~3例示をお示ししてきましたが
この物語は、ファンタジー色の強い内容
であるにもかかわらず
「現実にありそうな保育園」を
舞台に設定していますので
ジェンダー観を語らずにすますことは
できなかったのだと思います。

そういう意味では
こういうシチュエーションの
物語が
古びてしまうのは
やむを得ない
ことなのでしょうね。

ジェンダーとはまた別の問題点も・・

保育園の子どもたちのスナップ

『いやいやえん』を読まれた人は
すでにお気づきかとは思いますが
このお話しには看過できない問題点が
一つあります。

それは
いたずらざかりのしげる君が
たびたび「物置」に閉じ込められるという
エピソードです。

今日の観点から言えば
これは「虐待」ということになりますが
当時の保育園では日常茶飯でした。

ひつじかいも「物置」ならぬ園長室に
半日軟禁されたことがありますが
あのときの寂寥感は
今でも忘れることができません。

こうした対応が
幼い心の「トリガー」となることは
間違いないでしょうね。

『いやいやえん』は
完結したひとつの作品ですから
この「おしおき」の部分だけを抜き出して
修正することはできませんし
また、その必要もないとは思います。

ないとは思いますが
この部分を子どもたちから聞かれたら
何と答えればいいのかなと
少し心配になったりもします。

「昔の保育園はね、いたずらをすると・・」

「へえ~それってなんだかおもしろそ!」

なんて言われてしまうんでしょうか?
それはそれでまた、心配ですね。(笑)

 

 

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