「星の王子さま」=【ヤングケアラー】説を検証してみた!

こっちを見つめる王子さま 童話・ファンタジーほか
君ってケアラーだったの?

こんにちは、もりのひつじかいです。

今日は
かの有名な物語『星の王子さま』について
あらたな視点から王子さまの「内面」に
迫ってみたいと思います。

ピエロ

星の王子さまはヤングケアラーだって?

先日
新聞の朝刊をめくっていましたら
週一掲載の文芸時評欄に
こんな書き出しの論評が載っていました。
寄稿者は翻訳家の鴻巣友季子氏です。

サン=テグジュペリは第2次大戦中、米国に亡命し『星の王子さま』を書いた。
同作には祖国を出ていった者の惑いが投影されている。

王子の内なる闇が子供の私には理解できなかった。
ところが最近再読すると、この少年がヤングケアラーに見えてきたのだ。

彼が独り切り盛りする星には手入れを怠ると星を滅ぼす木や火山があり、注文の多い花は寝たきり者のようだ。

朝日新聞・朝刊「文芸時評」2021.8.25日より抜粋

よりにもよってあの孤高の王子さまを
ヤングケアラーに結びつけるという
大胆過ぎる発想に
多少の違和感を覚えたことは
否定はできませんが
本段落に続く次のフレーズを読んで
得心がいきました。

10代後半から介護を経験した今の私には、若者が持ち場を放棄して遠くへ行きたくなるのも、その後に抱えた心の重りもわかる。

かくいうひつじかいも
ヤングケアラーというほど
若くはありませんでしたが
20代で祖母を介護した経験があり
ケアにまつわる鴻巣氏の指摘には
大いに共感できるものがあったのです。

お年寄りの手を取ってケア

王子さまが抱える心の重りのひとつが
このケアの問題だったとするならば
星に置き去りにした「花」に対する
自責の念の
由来もはっきりします。

この部分『星の王子さま』本文では
どのように表現されているのでしょうか?

ぼくはあのころ、なんにもわかっていなかった!
ことばじゃなくて、してくれたことで、あの花を見るべきだった。

(中略)

ぼくは、逃げ出したりしちゃいけなかった!
あれこれ言うかげには愛情があったことを見ぬくべきだった。

河野万里子訳(新潮社)45ページ

星の王子さまは、ここで
「星から逃げ出した」ということを
素直に認めています。

花と王子さまとの間には、何らかの
確執があったということが分かります。

しかし地球に着いてからの王子さまは
逃げ出したことを後悔していて
それが心に引っかかっているのです。

あらためてヤングケアラーとは?

厚生労働省のホームページによりますと
ヤングケアラーに関し
次のような説明がなされています。

法令上の定義はないが、一般には家族にケアを要する人がいる場合に、本来は大人が担うと想定されているケアや責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行う18歳未満の子どもをいう。


文部科学省が2021年3月にまとめた
「ヤングケアラーの実態に関する調査
 研究について」
と題するレポートの概要を見ると

全国の中学2年生のうち、世話をしている家族が「いる」と回答した生徒はなんと5.7%にものぼるのだそうです。
(これは生徒17人に1人という値です。)

これらの生徒の内
【祖父母】を世話している生徒は14.7%
その世話の頻度は【ほぼ毎日】が31.9%
世話に費やす時間は
【3時間以上】が27.7%とのことです。

車椅子の父をサポート

世話の対象が【父母】は23.5%
【きょうだい】では
61.8%という高い割合になります。

全日制高校の2年制を対象とした
同一のアンケート調査でも
ほぼ同様の結果が公表されています。
また
ヤングケアラーの低年齢化は
年々進んでいるとの報道もあります。

こんなにも多くのヤングケアラーたちが
家族の世話をしているという実態に
ひつじかいは驚きを禁じ得ませんでした。

ちなみに
これらのケアラーたちの20.1%
5人に1人が「自分の時間が取れない」
と回答しています。

星の王子さまは日本の中学2年生よりも
はるかに幼少ですから、その心理的負担は
相当のものがあったのではないかと
推測されます。

仕事をうっちゃって
どこか遠くへ行きたくなったとしても
それを責めることなどできないでしょうね。

オリジナルな物語を「解釈してはいけない」という戒めもあるが・・

「星の王子さま」=【ヤングケアラー】
というのはひとつの仮説です。
鴻巣友季子氏があらたに唱えた
この仮説を踏まえ、ひつじかいが
「あれこれ」解釈を加えているのです。

小説家の保坂和志氏は数ある著作のなかで
小説(物語)のコンテンツに対し
知ったかぶりの解釈を加える愚かしさを
再三にわたり指摘しています。

「素材をそのまま味わいなさい」

というのが氏の持論です。
この味付けにはどんな【意図】があるのか
などと勝手に深読みしてはいけない
ということですね。

【意図】を詮索すればするほど
正解からは遠ざかる

そもそも小説(物語)には「解」など
ないのだから
【意図】を求めたところで

本末転倒だというわけです。

こういう厳しい意見があることも
すべて承知のうえで、それでもあえて
「星の王子さま」=【ヤングケアラー】説
を考えてみますに、これについては

怪我をしたぬいぐるみのくまちゃんをケア

「本末転倒」とは言えないような
そんな気がするのです。

王子さまに向かって
キツネはこんなふうに言います。

「でも、きみは忘れちゃいけない。きみは、なつかせたもの絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある・・・・・」

「ぼくは、ぼくのバラに責任がある・・・・・」

忘れないでいるために、王子さまはくり返した。

河野万里子訳(新潮社)109ページ

「なつかせたもの」「絆を結んだもの」を
「ケアしたもの」
という言葉に置き換えてみても
そのまま文意が通じるはずです。

ケアラーである王子さまが
この言葉を真剣に受け止めたことは
言うまでもないでしょう。

世界中の多くのヤングケアラーたちも
ケアをめぐる様々な思いと格闘しながら
この「責任」という使命を果たすべく
日々生活しているのではないでしょうか。

わたしたちが愛してやまない
星の王子さまも
再び「ケア」と向かいあうために
あの花のもとへと
還っていったのだと思います。

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