こんにちは、もりのひつじかいです。
新型コロナウイルスの蔓延による
生活スタイルの急激な変化は
わたしたちの嗜好についても
少なからぬ変容をもたらしているように
感じられます。
そのなかのひとつとして
「テレビドラマの復権」ということが
挙げられるのではないでしょうか。
過去に放映されたドラマで
評判のよかったもの
=作品のクオリティが高かったものが
続々と再放送されました。
「3密」を避けられないという理由から
テレビドラマの制作現場をフリーズさせ
苦肉の策として繰り出したのが
連続ドラマの再放送
という平凡な一手でありました。
しかし結果的にこの平凡な一手が
ひょうたんから駒となったようです。
テレビドラマからすっかり
こころが離れしてしまっていた
「ボヘミアン」たちを立ち止まらせ
振り向かせることができたのではないかと
ひつじかいは感じています。
ということで今回は
『アシガール』の再放送を足がかりに
かつての
名作級ドラマの話題にも少し触れながら
「面白いドラマはやはり面白い!」
という当たり前の話しを
ちょっと変わったアングルから
お伝えしてみたいと思います。
絵本づくりを志すあなたにとって
ドラマから学ぶべきことは
案外たくさんあるように思います。
それではこれから、人気ドラマの核心を
いっしょに探っていきましょう。
まずは『アシガール』のおさらいから
『アシガール』は2017年9~12月に
NHKでオンエアーされた連続ドラマです。
原作は『ごくせん』で知られる
少女漫画家の森本梢子氏。
このドラマのキャッチフレーズは
超時空ラブコメ!!
(・・って一体何?)
主人公は
脚力だけには自信がある
(ということは、
お勉強のほうにはあまり身の入らない)
女子高生・速川唯(16歳)。
彼女はある日
引きこもりの弟(超天才)が作った
タイムマシン(脇差というところが凄い)
により戦国時代の真只中に
タイムスリップしてしまいます。
そこで羽木家の若君、羽木九八郎忠清
と出会い、若く精悍な武将に一目惚れ。
現代に戻ることも忘れ
若君の命を守るために足軽を志願します。
つまり足軽を志願したガールだから
足軽→足ガール→アシガールというわけ。
さまざまな紆余曲折を経て
唯は足軽から若君の馬廻り役に出世。
そして、やがては若君の正室へと・・・。
戦国時代へのタイムスリップ物といえば
古くは角川映画に『戦国自衛隊』
なんていうのがありましたし
最近では連ドラの『信長コンチェルト』
を連想したりもします。
題材としての新機軸はありませんが
主人公が足軽(ということは当然男)
に扮しているという点と
やむを得ぬ事情により
若君を現代に送り込んでしまう
という辺りに発想の柔軟さを感じました。
“超時空ラブコメ”のうたい文句どおり
唯の時空を超えた「はちゃめちゃな」
ラブストーリーが展開していきます。
戦国時代は「食うか食われるかの世界」
であるわけですが
そんな時代にタイムスリップした
コミカルな、だけど一途な少女の想いが
世界を動かしていくという
奇想天外な物語に、ひつじかいは
完全にハマってしまったのでありました。
『アシガール』をオンタイムで観なかった理由は?
2017年の春
ひつじかいとその家族は
長野県・富士見町のとあるペンションに
宿をとりました。
そのペンションはかつて
『高原にいらっしゃい』というドラマに
登場したこともある有名なペンションで
主演の高島・弟さんの写真が
食堂に飾られていました。
ペンションの近くには
草原が広がっていて
時代劇の合戦シーンの撮影地として
業界ご用達の場所でもあるのだとか。
「今はNHKがドラマを撮影しています」
食後の歓談のひととき、オーナーが
気さくに話しかけてくれました。
「何でも、女の子が足軽に扮するSF物
なんだそうです」
「へー、面白そうですね」
とひつじかい。
「先日、撮影の合間に、主演の女の子が
お茶を飲みに見えられたんですよ」
「ほう・・・」
「とても可愛いい娘でした。
でも、なんていうのかな
オーラ―が感じられないといいますか
ふつうに、どこにでもいそうな
そんな雰囲気の娘でしたね」
『アシガール』の話題は
そこでフェードアウトしてしまいました。
でもこのときの何気ない会話は
ひつじかいの家族にー
『アシガール』っていうタイトルは
奇抜だけど
主演の女の子が
平凡みたいだから
平凡なドラマかもしれないね!
という先入観を
刷り込んでしまったのです。
半年後に『アシガール』は
オンエアーとなりましたが
ひつじかい&家族は
(といいますか家族の先入観が)
このドラマを
あっさりスルーしてしまったのでした。
きっかけは連続ドマラ『野ブタをプロデュース』
あれから3年がたちました。
その間にひつじかい一家には
過酷な試練もあり
『アシガール』は評判がよかったらしい
なんていう噂も
全く聞こえてきませんでした。
ところが今年に入ってから
コロナ禍による外出自粛が
冒頭でもお伝えしましたように
かつての傑作ドラマの再放送へと
つながっていったのです。
ある夜チャンネルをひねっていましたら
偶然にも
連続ドラマ『野ブタをプロデュース』
の再放送がオンエアーされていました。
ほかに観るものもありませんでしたので
漫然と画面を目で追っていました。
ところが
書店のあるじ役で出演していた
忌野清志郎さんを見かけたあたりから
ひつじかいの心に
スイッチが入ったのです。
気がつくと
堀北真希さんのパフォーマンスに
すっかり魅了されていたのでした。
(彼女って、こんな演技ができるひと
だったっけ・・・。
根っからの大根だと思ってた!)
ほかにも何本か面白そうなドラマが
再放送されていましたが
ひつじかいの耳目を捉えたのは
そう・・・
あの日あの時耳にした連続ドラマ
『アシガール』だったというわけです。
『アシガール』人気の秘密はこれだ!
『アシガール』の原作は少女漫画であり
現在も連載中ということですので
ドラマの方の人気を支えているのも
もちろん
同じカテゴリーの女性たちなんだろうと
思います。
ひつじかいは
そんな彼女たちの心情については
ひたすら推測するしかないわけですが
このドラマを視聴して
ある一点において
はっと胸を打たれました。
それはー
*回が進むごとに変貌していく
主演女優の「目」の輝き!
「どこにでもいそうな女の子」
黒島結菜さんの「目」に注目したのです。
かつてペンションのオーナーが話して
くれたとおり
ドラマが始まった直後の黒島さんには
ほとんどオーラが感じられませんでした。
ところが
彼女演じる足軽(唯之助)が
若君と共に戦場を駆け抜けたあたりから
状況が変化し始めます。
黒島さんの目が
生き生きと輝きだしたのです。
超時空ラブコメ!
に強烈なリアリティーを与えたのが
この目であったことに
異論はないと思うのです。
撮影開始からわずが2月あまりの間に
女優・黒島結菜は
大きく変貌を遂げていたのでした。
あの目で
「若君さま~!」
とやられれば
たいがいのひとたちは
トロトロになってしまうでしょう。
なにをかくそうひつじかいも
骨抜きにされた、そんなひとりです。
『アシガール』以後の
黒島さんの躍進ぶりは
それを見事に証明していると思いますね。
名作ドラマの陰に「変貌を遂げた」俳優あり!
NHKは昔から
秀逸な連続ドラマを制作することにかけて
民放の追随を許さないところがあります。
『天下御免』(1971~1972)も
そんな秀逸なドラマのひとつです。
あの喜劇作家・三谷幸喜さんに
「今までで一番影響を受けたドラマ」
と言わしめたほどですから
推して知るべしですね。
このドラマで大きく変貌を遂げたのが
中野良子という女優でした。
『傷だらけの天使』(1974~1975)
というドラマをご存じの方も
だいぶ少なくなられたでしょうね。
『相棒』シリーズで現在も活躍を続ける
水谷豊さんの出世作です。
主演のショーケン(荻原健一さん)を
向こうにまわし
「完全に主役を喰ってしまった」
といわれるくらいの変貌ぶりを
たっぷりと見せつけてくれました。
かつてはドラマ好きだった
ひつじかいにとって
向田邦子というドラマ作家を
忘れることができません。
彼女のドラマからは
「間」というものの奥深い意味を
教えられました。
そんな向田さんが書き下ろした
いぶし銀の連続ドラマが
『冬の運動会』(1977)です。
このドラマには根津甚八さんの恋人役で
いしだあゆみさんが出演されていました。
彼女もこのドラマの中で
歌手から女優へと変貌を遂げたひとりです。
このほかにも
お話ししたいドラマは
いくつもありますが
最後に『北の国から』(1981~1982)
について一言触れておきましょう。
このドラマで注目を集めたのは
子役の二人(吉岡秀隆&中嶋朋子)
だったわけですが
役者として大きく変貌を遂げたのが
二人の父親を演じた田中邦衛さんでした。
不器用で無骨、だけど情愛深い父親を
見事に演じきった彼の演技がなければ
このドラマの成功もなかったことでしょう。
・・・・・・
繰り返しになってしまいますが
ひつじかいが言いたいことは
連続ドラマにはまだまだ可能性がある
ということです。
ただし、そのためには俳優たちの変貌、
ブレークスルーが不可欠です。
絵本についても同じ事が言えるでしょう。
俳優ならぬ
登場人物(動物)たちの変貌ぶり
ブレークスルーを
子どもたちは楽しみに待っているのだと
思うのです。
秀逸な連続ドラマから学ぶべきことは
まだまだたくさんありそうです。