絵本ストーリーを練り上げる!ひつじかいの『おつきみくださ~い』

月に紅葉のイラスト オリジナルストーリー
おつきみくださ~い

こんにちは、もりのひつじかいです。

今日は
自前の絵本ストーリーを練り上げるべく
全体を12等分した原稿に
「切った貼った」を施し
ブラッシュアップを図りたいと思います。

この記事の導入部(前段)につきましては

→ こちらから確認してください。

あなたが
ご自分でストーリーを作られたことが
ないという場合は
少し難しく感じられる部分が
あるかもしれません。

その場合は、練り上げたあとの原稿
つまり【After】の方を
お読みいただければと思います。

実作の経験があれば
ひつじかいが

練り上げる途中で思案したことなども
メモ的に書き加えていますので
メイキングの舞台裏を
お楽しみいただけるものと思います。

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各見開き(プロット)の【Before】&【After】

では、見開き1から順番に
練り上げる前後のストーリーを
書き出していきます。
対比しながらお読みください。

うさぎのお菓子

注:全体を通しての修正点

原稿を12等分し、それぞれのパートを
別個のものとして点検したところ
「うさぎ」の登場が
あまりにも唐突すぎる
という印象がありました。
そこで
見開き1で伏線を張ることにしました。

また、物語にフォーカスしやすいよう
登場人物を絞ることにしました。
主人公の名前も
親しみやすいものに変更しています。

さらに、全体的にボリュームを
10%ほどシェイプアップしました。

 

□見開き1

【Before】

こんやは じゅうごや

まちにまった おつきみのひ。

えりかちゃんは あさから 

わくわく どきどき しています。

だって、おかしが いっぱい 

もらえる ひですもの!

おねえちゃんといっしょなら

でかけてもいいよって

ママから いわれています。

【After】

うさぎさんは どうして なかないの?

ようちえん からの かえりみち

なっちゃんは ママに たずねました。

さっき キャベツを あげたときだって

うさぎさんと きたら 

もぐもぐ たべて いるばかり!

どうしてかしら?

ほんとうは うさぎさんも 

ないてみたいのかも しれないわね。

ママが ぽつりと いいました。

 

□見開き2

【Before】

おおきな ふくろも よういしました。

ここに おかしを いれてもらうのです。

おねえちゃんは

「おおきすぎるよ」って いうけれど

ともだちの なっちゃんは

「おおきいほうが いいにきまってる!」

って いうから

この ふくろに きめたのです。 

ゆうがたに なりました。

そろそろ おでかけの じかんです。

【After】

きょうは じゅうごや おつきみです。

おつきみといえば おかし でしょ!

えっ おかし?

そうですよ。

なっちゃんの いえの きんじょでは

おつきみのひに おかしを もらえるの。

だから なっちゃんも こんなに おおきな

ふくろを よういしたのよ。

 

□見開き3

【Before】

おねえちゃんの おともだちも 

やってきて、ぜんぶで 5にん。

「おつきみ くださ~い」

みんなは こえをあわせて となえると

きんじょの いえの おにわに

ずんずんと はいっていきます。

えんがわには すすきが かざられ

やさいや おまんじゅうが 

おつきさまに そなえて あります。

【After】

ゆうがたに なりました。

おでかけの じかんが やってきました。

なっちゃん、ことしは おねえちゃんに 

ついて いこうかな。

だって ママと いっしょだと

かえって はずかしいもの。

おつきみくださ~い。

おねえちゃんは どうどうと

おとなりさんちに はいっていくわ。

ちょっと まってよ おねえちゃ~ん。

 

□見開き4

【Before】

「おつきみ どうぞ」

おばあちゃんが おそなえの おかしを 

みんなに とりわけてくれました。

ところが えりかちゃんと きたら

はずかしくて はずかしくて

おにわに はいることが できません。

みんなは もう つぎの 

おかしのことで あたまが いっぱい。

【After】

えんがわに おばあちゃんが すわってる。

すすきに おだんご それから おかしも。

さあさ めしあがれ おつきさま。

はい、おつきみ どうぞ。

おばあちゃんが、

じぶんで こさえた おまんじゅう

ふたりに わけて くれました。

ありがとう おばあちゃん。

おつきさま いただきま~す。

 

□見開き5

【Before】

えりかちゃんのことなど 

おかまいなしに どんどん

どんどん いってしまいます。

「まって、まってよ~」

えりかちゃんは

あわてて あとを おいかけました。

つぎの おたくは 

どうぶつびょういん!

また ことしも すごい おかしが

もらえるかな~。

【After】

おつぎは カブくんどうぶつびょういん。

ここはね ここは

おおきな おかしが もらえるのよ。

みんなには ないしょ ないしょだよ。

おつきみくださ~いって いうまえに

ふくろに ぽんぽん

いれてもらっちゃった!

えへへ。

 

見開き6

【Before】

「おつきみ くださ~い!」

みんなの こえにも 

おもわず ちからが はいります。

ところが えりかちゃんと きたら

もじもじ ぐずぐず するばかり。

すごい おかしを もらい そこねて

いまにも なきべそを かきそう。

あたりは だんだん

くらくなって きました。

【After】

あたりは だんだん くらくなって

さっきまで かおをだしてた おつきさまも

くもの うしろに かくれちゃったの。

おねえちゃん かえろう、

ねえ かえろうよ おねえちゃん。

まだ だめよ。

ふくろが いっぱいに なったら

かえろうね。

だけど なっちゃんの ふくろは

こんなに おおきいんだよ!

 

見開き7

【Before】

おねえちゃんたちの ふくろは

もう おかしで はちきれそうです。

でも えりかちゃんの ふくろは

ぺったんこ。

みんなが かどを まがりました。

えりかちゃんも いそいで はしって

ちかくの おにわに かけこみました。

あれ? みんなは どこ?

おねえちゃんたちの すがたは

どこにも みあたりません。

【After】

おねえちゃんが まがりがどを まがる。

なっちゃんも いそいで

まがりかどを まがるね。

あれれ? おねえちゃん?

おねえちゃんが いない!

どこ? どこにいるの おねえちゃん? 

ここ かな?

この おにわにかな 

 

□見開き8

【Before】

おにわの おくのほうを よくみると

のっぽの うさぎが 2わ

せっせと おもちを ついています。

ふしぎなことが あるものです。

えりかちゃんは 

みんなの ことなんて 

すっかり わすれて

しばらく ようすを ながめていました。

うさぎは おたがいに ことばを

かけながら たのしそうに

おもちをついています。

【After】

 その おにわでは、

2わのうさぎさんが げんきよく

おもちつきを しています。

あははは。へんなの?

うさぎさんが おもちつき だなんて。

おつきさまから きたのかな?

それとも 

ようちえんから きたのかな?

 

□見開き9

【Before】

それが あまり たのしそうなので

えりかちゃんも ちょっと

おもちを ついてみたくなりました。

そこで

なかまに いれてと いうために

うさぎの そばまで いって

「おつきみ くださ~い」

って いいました。

あれ? ちがったかな?

【After】

うさぎさんと うさぎさんが

とっても たのしそうなので

なっちゃんも いっしょに

おもちを ついてみたくなりました。

臼の中のつきたておもち

なかまに いれてと いいたくて

そばまで いくと

おつきみ くださ~い

って いいました。

あれ ちがうかな?

 

□見開き10

【Before】

すると、うさぎは 

「ほいきた がってん おつきみだ!」

「まかせて がってん おつきみだ!」

と ようきに こえを かけあうと

ついたばかりの おもちを くるくると

まるめ、えりかちゃんの ふくろに

たくさん いれて くれました。

そうして

「いつも しんせつにしてくれて

 ありがとう」と いうと

ぴょんぴょん はねて どこかへ

いってしまいました。

【After】

すると うさぎさんと うさぎさんは

 

ほいきた がってん おつきみだ

まかせて がってん おつきみだ

 

と いせいよく

つきたての おもちを まるめて

なっちゃんの ふくろに

どっさり いれて くれました。

 

□見開き11

【Before】

おねえちゃんたちが あおくなって

かけこんできたのは それからすぐの

ことでした。

えりかちゃんは いまみた できごとを

みんなに はなして きかせました。

それから

あの うさぎは ようちえんの 

うさぎに まちがいはない 

ということを つけくわえることも 

わすれませんでした。

【After】

おねえちゃんが ママをつれて

かけこんできたのは 

それからすぐの ことでした。

おそらには

おおきな じゅうごやの おつきさまが

かおをだしました。

おねえちゃん、 ふくろ いっぱいに

なったから、もう かえるよ。

 

 

□見開き12

【Before】

「へえー、そんなことも あるんだね」

だれかが ぽつりと つぶやきました。

そうして みんなは もういちど

えりかちゃんから もらった おもちを

ふしぎそうに ながめました。

おもちは まるで おつきさま 

みたいに まんまるで

まだ ほのかに

ぬくもりが のこっていました。

(おわり)

【After】

ママ、うさぎさんはね 

おはなしが できるんだよ。

みんなは 

なっちゃんが もらった おもちを

ふしぎそうに ながめました。

それは まるで おつきさま 

みたいに まんまるで

てに とると まだ ほのかに

ぬくもりが のこって いました。

(おわり)

「原稿を等分に分割する」メリットとは

今回初めて
「原稿を等分に分割する」という手法で

中秋の名月

自前のストーリー『おつきみくださ~い』
を練り上げてみました。

この試みを通じて気がついたことを
次にまとめてみましょう。

*たたき台としての
プロット(見開き)が完成しているので
これを練り上げるのは思いのほか容易。

*伏線を張ったり登場人物数の変更などの
大きな変更も抵抗なく行うことができる。

*全体を俯瞰的に捉えることが可能となり

作業効率がアップする。

と、なんだか良いことづくめですね。
ディメリットについては
特に何も感じませんでした。

前回用意した第1稿(打ちっぱなし)を
今回のような分割稿へもっていく展開は
分かりやすくいうと
ダミー(仮定稿)を作る
ということではないかと思います。

つまり
絵本用のストーリーを紡ぎ出すために
ひとまず仮の姿を与えてやるのです。
それが分割稿の役割ではないでしょうか。

科学の実験を例にとれば
ダミーとは
いわば「仮説」ということになりますね。

本質(エッセンス)に
最短距離で到達するための
効果的な手法です。

ひつじかいは今後
この手法もときどきは使って
作品づくりをしていこうと思います。

まだ
この「等分に分割する」という手法を
試されていない、あなた!
一度チャレンジしてみてくださいな。

何か斬新な手応えを
感じることができるはずです。

☆こちらの記事も、いかがですか?
(『おつきみくださ~い』の変遷の過程を追うことができます。)

『おつきみくださ~い』絵本オリジナルストーリーをブラッシュアップ

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