保育士が書いた絵本選びの指南書『絵本の本』のポイントは6つ!

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選び方にもポイントがある?

こんにちは、もりのひつじかいです。

40年間保育の現場に携わった
プロ中のプロ保育士が書いた
絵本選びの指南書

絵本の選び方を指南『絵本の本』の表紙

『絵本の本』
中村柾子(なかむらまさこ)著
福音館書店/2009初版

この本には絵本を選ぶ際の
キーポイント=親の心得が
いくつか記されています。

じっくり読み込んでいくと
かなり大胆な提案がなされていることに
気がつきます。

しかし
40年という実践に裏打ちされた提案
でありますので
確固とした説得力があるのです。

今日は、そんな指南書を教材に
著者が考える絵本選びのポイント
=親の心得について
簡潔にまとめてみたいと思います。

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絵本選びのポイントは全部で6つ!

著者が考える絵本選びのポイントは
次の6つの項目に集約できるでしょう。

【その1】
「子どもは無垢でかわいい」ものだから
安全で無害な絵本がふさわしいという
思い込みに縛られてはいけない。

【その2】
「昔話には残酷なものが多い」
という
思い込みから
省略・改変さてしまったお話しばかりを
選んではいけない。

【その3】
「科学絵本はお勉強のためのもの」
との思い込みから
気軽に開いてみることを
ためらってはいけない。

【その4】
ぱっと見”かわいくない”絵本について
「どうせ内容もぱっとしないかも」
との思い込みから
読まずに敬遠してはいけない。

【その5】
絵本を読み終わったあとに
あれこれ解釈の枠を示して
子どもの自由な読み取りを
意図的に
誘導しようとしてはいけない。

【その6】
名作と呼ばれる定番絵本にこだわり
新しい絵本に見向きもせず
作品の選択の幅を
自ら狭めてしまってはいけない。


いかがでしょうか?

いずれの指摘も
的を射たポイントばかりです。

なかでも「親の思い込み」が
子どもたちが多様な絵本と出会う機会を
奪っているのではないかという洞察は
絵本による子育てを卒業してしまった
ひつじかいの耳にも、かなり痛いですね。

今回はこれらの指摘の中から
特に重要度が高いと思われる
その1、その2、その5について
くわしく見ていきたいと思います。

「かわいい」かどうかなんて本の価値とは関係がない

7匹のかわいい子豚の赤ちゃん

著者が特に力を込めて言っているのが
この項目ですね。

物語のおもしろさを二の次にして
「かわいさ」だけを取り出し
それを与えようとしてはいないか
ということです。

「かわいい」は、人を困らせもしないし、無害で、安心感もあって、だれにでも好かれます。ですがそれは言葉を換えれば、「無難だ」ということになるのではないですか? 無難さは生きていくことの生生しさを漂白してしまいます。
(本文83ページから抜粋)

世界にはとても深い意味を持つ出来事が
たくさんあるはずなのに
「かわいい」を基準にしてしまうと
「きたない」「残酷」「暗い」
「気持ちが悪い」と大人が感じたものが
排除されることになってしまいます。

無限の可能性のある子どもを
「かわいいもの」「無垢なもの」
という盲目的な思い込み(エゴ)で
オブラートにくるんでしまって
本質を見落としてはいけないという
これはまさに警鐘ですね。

かわいさには何の実体もないばかりか
絵本が「かわいい」かどうかなんて
本の価値とはまったく関係がない
という事実を受け入れることができたとき
「かわいくなければダメ!」
という呪縛から

解き放たれるだろうと著者はいいます。

すると今まで
気にもとめなかったような絵本の魅力に
気がつくことができるはずだというのです。

その結果、絵本選びに幅が出れば
それはとりも直さず
子どもたちの世界観を広げることにも
つながるはずですね。

割愛されていない昔話(絵本)を選ぶ

著者が相当のページを割いているのが
昔話の項目です。

昔話のプリミティブ(素朴)な語り口
単純明快さ
繰り返し。

こうした魅力的な要素をたっぷり備えた
昔話の絵本は
子どもの「ものの理解のしかた」や
「受け止め方」にフィットしている
というのです。

だから昔話を題材にした絵本を
大いに活用すべきであるわけですが
「昔話は残酷である」「怖い」という
大人の思い込みから、省略されたり
作り換えられたりしてしまって
今やオリジナルな昔話(絵本)を
簡単に手に入れられない状況に
なってしまっているのだそうです。


たとえば『三びきのこぶた』も
「シンデレラ」の原型といわれる
「灰かぶり」や『白雪姫』なども
肝心なところが省略されているのだとか。

それはとても残念なことだと
著者は考えています。

なぜなら、昔話は
「この世には怖いこともある」
ということや
「人の心のさまざまな葛藤」

「生きていく上で克服しなければならない
もの」などを
とつとつと諭してくれるからです。


ちなみに著者は

『やまなしもぎ』
平野直・再話/大田大八・画
福音館書店/1977

という昔話を題材にした絵本を
絶賛しています。

ひつじかいもさっそく
取り寄せてみたいと思います。

思わず添えたくなる一言をぐっと飲み込む

絵本を読んだ後に、子どもから自然に言葉が出てくるときには、ぜひそれを黙って聞いてやってください。
子どもから言葉を引き出す絵本は、物語として十分に面白く、また露骨なテーマ性もなくて、こうあらねばならぬと読みを強要しないからこそ、色々な受け止めかたができるし、考えるきっかけも与えてくれます。そこに、あえて解釈の枠を与えて、特定の方向に向けて、物語の読み取りのパターンを誘導していくようなことは、控えたほうがいいと思うのです。
(本文224ページから抜粋)

これはひつじかいにも経験がありますが
子どもにもよかれと思い
「主人公の○○はえらかったね!」なんて
ついついよけいな一言を
添えたくなってしまうものです。

それが「誘導」だなんて
考えもしないで・・。

子どもに絵本を読み聞かせる

たしかに絵本を読んだあとに
結論めいたことを
ほのめかされると
自分の考えを広げたり深めたりする
大切な機会を
奪ってしまうことになりかねません。

読後に子どもが黙っていても
うまく言葉で言えないだけで
ちゃんと何かを感じていると
著者はいいます。

子どもを信頼し
「おしまい!」と一言だけ言って
絵本を閉じる勇気を
ぜひとも身につけたいものです。

未来の子どもたちのために

新しい作品であれば、新しい発想が持ち込まれていればなんでもいいということではありません。物語や見せたいことに合った絵なのか、ちゃちな子どもだましの作りをしていないか、こうしたことがきちんと押さえられていないと、いくら面白い発想があっても、よい絵本とは言えません。それがわかるようになるには、やはり一冊でもたくさんの絵本を自分でも読み、また子どもにも読んでやることです。
(本文246ページから抜粋)

著者に言わせると
新しく生まれてきた絵本の魅力に気づき
それを新たな定番として、次世代に
さらにはその先へと伝えていくのは
出版社の仕事ではないというのです。

絵本の面白さや楽しさは
子どもたちが見つけてくれるけれど
そのためには、まずは大人が
いい絵本を手渡さなければならないと。

つまり、優れた絵本を
世代を超えて読み継いでいく
というプロジェクトは
大人と子どもの共同作業だというのです。

こんなスケールの大きな話しは
ぜんぜん考えてもいませんでしたが
わたしたち大人には
そういう責務もあるということですね。

こうした責務を果たすためにも
日ごろは進んで読まないような作品とも
たまにはちゃんと向き合ってみる
そういうことも大事だよと
著者の指南は続きます。

そうすることで
自分が絵本を選ぶときの好き嫌いや傾向
価値観、思い込みといったようなものが
あぶり出されてくるのだとか。

そうして、それらを冷静に
客観的に見つめることができたとき

本の内容に驚く少女

「こんな絵本、今まで見たことがない!」
というようなコンテンツと出会っても
その本当の面白さや真価を見抜く力が
養われているはずだというのです。

未来の子どもたちのために
新たなロングセラーを発見するための
この壮大なプロジェクトに
あなたもぜひ、参加してみてください。

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