こんにちは、もりのひつじかいです。
今回は
「逃げるは恥」
略して〈逃げ恥〉について
逃げるって恥なことなのか?
ドラマがいうように
本当に役立つことなのか?
というようなことなどを
あれこれ考えてみたいと思います。
さて
そういうひつじかいは、これまで
逃げてばかりの人生でしたが
あなたはきっと、堂々と
ご自身の命運に
立ち向かってこられたんでしょうね?
え?
違う?
逃げたことがあるって?
マジで?
シンパシー感じちゃいますよ!
もう、ほんとに!
こんなにあった〈逃げる!〉の絵本
これは絵本をめぐるブログですので
逃げる!って
絵本ではどんなふうに扱われているのか
というところから
話しを起こしていきたいと思います。
とりあえず
逃げる!をテーマとした絵本を
拾い出してみましょう。
はじめにタイトルに
〈にげる〉という言葉があるものから-
『ぼく にげちゃうよ』
(マーガレット・W・ブラウン文/
クレメント・ハード絵/ほるぷ出版)
『にげろ にげろ』
(ジャン・ソーンヒル再話/
光村教育図書)
『そら、にげろ』
(赤羽末吉・作/偕成社)
『みんなにげた』
(岸田衿子・文/長新太・絵/
ひかりのくに)
『きんぎょがにげた』
(五味太郎・作/福音館書店)
→ レビュー記事はこちら。
〈にげる〉と題名にはないけれど
逃げることがテーマの絵本は-
『アンガスとあひる』
(マージョリー・フラック作
/福音館書店)
『うしかたとやまんば』
(坪田譲治・作/村上豊・絵
/ほるぷ出版)
『ジャックと豆の木』
(ジョン・シエリー再話・絵
/福音館書店)
『さんまいのおふだ』
(水沢謙一・再話/梶山俊夫・絵
/福音館書店)
『かしこいモーリー』
(ウォルター・デ・ラ・メア再話
/エロール・ル・カイン絵/ほるぷ出版)
ほかには
2011年以降
災害や犯罪などから逃れるための絵本が
いくつか出版されています。
『はしれ、上へ!つなみてんでんこ』
(指田和・文/伊藤秀男・絵/ポプラ社)
『とにかくさけんでにげるんだ』
(ベティー・ボガホールド作/
河原まり子・絵/岩崎書店)
など
逃げる!絵本は
結構バラエティに富んでいます。
そういえば
昔話に題材を取った絵本には
『かしこいモーリー』のように
魔法をかけて逃げる!
これは
マジックフライトと呼ばれています。
というパターンのお話しを
世界中から見つけることができます。
「お母さんから逃げるよ」という
うさぎの坊やのお話し
(『ぼく にげちゃうよ』)や・・
あひるから思いがけない反撃を受けて
ほうほうの体で逃げ出す子犬
『アンガスとあひる』)
を除けば・・
ほとんどの〈逃げる!〉絵本は
「生きのびるために逃げる」
あるいは・・
「本来の自分でいる」ために逃げる
(『そら、にげろ』
『きんぎょがにげた』)
という図式になっているのでは
ないでしょうか。
大雑把な言い方になるかもしれませんが
絵本についていえば
〈逃げる!〉は
決して恥ずかしいことではありません。
むしろ
生きのびるために
思い切って「逃げたほうがいいよ」と
推奨すらしているんですね・・。
映画も小説も〈逃げる!〉は折り込み済み
では
映画や小説などに目を転じてみましょう。
ここでも逃げる!は
ほとんど主役級的な存在ですね。
スパイ映画しかり
スリル&サスペンスや
西部劇・戦争映画
SF映画
アドベンチャーに至るまで
誰かがどこかで逃げています。
純愛ものだって
ほら
ダニエルとメロディが
自由な愛の国に向かって
二人で小さなトロッコを漕ぎながら
逃げてたでしょう?
純真に・・・。
(『小さな恋のメロディ』)
『大脱走』の
スティーブ・マックイーンしかり
『北北西に進路を取れ』の
ケーリー・グラントも
『インディージョーンズ魔宮の伝説』の
ハリソン・フォードも
『ターミネーター2』の
アーノルド・シュワルツェネッガ-
までもが
逃げていたではないですか
それも見事なアクションを交えて・・。
ちなみに
ひつじかいが愛するフーテンの寅さんは
「今度帰ったら、きっとみんなで仲良く
暮らそう」と心に誓い
ふるさとの葛飾柴又に
ツバメの如く舞い戻ってくるわけですが
例によって例の無頓着ぶりに角が立ち
寅屋のまわりに混乱と愁嘆を残したまま
いずことも知れぬ旅空の下へと
逃げて!行ってしまうのであります。
たしかに寅さんには
さくらという妹がおり
その妹が健気に尻拭いをしてはくれますが
寅さんは逃げてもよくて
あなたは逃げちゃいけない
なんていうことはありませんよね。
あなただっていざとなったら
逃げたっていいのだと思います。
ひつじかいも同じです。
もうだいぶ前の小説ですから
あなたはご存じないかもしれませんが
庄司薫(しょうじかおる)という作家が
(ピアニスト・千葉紘子さんの旦那さん)
『赤ずきんちゃん気をつけて』という
小説を発表しました。
この小説の主人公「かおるくん」は
高校生でも大学生でもない
宙ぶらりんな状況のなかにいます。
というのは
大学紛争のため
志望校が受験を取りやめてしまったので
進学に黒白がつかなかったんですね。
でも、かおるくんのいいところは
そんなどっち着かずの
モラトリアムな状況に
「くさらなかった」ということです。
むしろ
そんなモラトリアムな状況に
進んで〈逃げ込んで〉さえいるのです。
そうすることでかおるくんは
一年間の宙ぶらりんな空白を
見事に乗り切ったんですね。
そうして、ひつじかいたちの前には
『赤ずきんちゃん』シリーズという
稀有なモラトリアム小説が
残されたというわけです。
ここに
逃げる!ことの効能のひとつ
役立つ事例が
はっきり描かれていると思います。
なぜ「逃げるは恥」といわれるのか?
それはつまり
こういうことだと思います。
あなたが追い詰められた局面で
鮮やかに逃げた!としても
誰もあなたに面と向かって
「君、恥ずかしいね!」
なんて言いませんよね。
武士の世界であれば
「お主、恥を知れ!」
ということにでもなるのでしょうが
さいわいここは令和の世の中です。
かつてルース・ベネディクトという人が
『菊と刀』という古典的名著の中で
「恥の文化」
ということに言及していますが
この本を読むまでもなく
「逃げるは恥」といっているのは
ほかならぬあなた自身なんですね。
自分で自分に向かって
「ここで逃げるのは恥だ」と
つぶやいているわけです。
だから
問題は更に根深くなってしまうのです。
そんなにおいそれとは
「逃げられなく」なってしまうのです。
だって
自分で自分を監視しているわけですから
「恥」というメジャーを持って・・。
その昔大学を卒業したひつじかいは
東京から田舎に〈逃げ帰り〉ました。
あれほどあこがれた「花の都大東京」を
見限ったんです。
ここは自分の棲む場所ではないなってね。
それからおよそ30年後
こんどは勤め先でパワハラに遭い
職場から〈逃げ去り〉ました。
生きのびるために
そして
もっと自分らしく生き直すために。
そのときは
「中途でやめるなんて恥だ」なんて
考えている余裕さえありませんでした。
精神の均衡を保つことに必死で・・。
あなたやひつじかいのように
逃げる!ことができるひとは
まだいいのかもしれません。
逃げる!ことができないひとにこそ
「逃げるは恥でもなんでもない!」と
伝えなければいけないのだと思います。
お茶の水大学・准教授の岩壁茂先生は
『恥(シェイム)
生きづらさの根っこにあるもの』
という著書の中で
恥とは感情だと言っています。
それを感じるだけで
恥や痛みの感情が誘引されてしまうので
普段は
心の奥底に隠されているのだとか。
隠された感情だからこそ有害なのだと
岩壁先生はいいます。
ではどうしたらいいの?
隠されている恥(シェイム)を
表に引っ張り出してその正体を知ること。
それだけで
恥のパワーはかなり低減するのだとか。
どうもおしゃべりが過ぎたみたいですね。
もう一度ここで結論を言うと
「逃げる!ことは恥ではない」
ということです。
あなたが生きのびるために
あなたが本来のあなたでいるために
逃げてもいいんだということを
思い出して欲しいと思います。
そうして
もうひとつ大切なことは
「恥」とは感情であるということです。
感情であるから
「コントロールすることができる」
ということです。
いつまでも
「恥」に縛り付けられている必然はない
ということです。
ということで
2つ目の問に対する答えは
ドラマのタイトルの通りですね!
「逃げるは(ホントに)役に立つ!」。
あなたのご意見をお聞かせください。
☆こちらの記事も、いかがですか?
【人生の寂しさと短さをお酒なしで味わい尽くすために。】
📑「しらふで生きる」とは人生を受け入れること!町田康の哲学に学ぶ
【子ども向けの絵本を〈大人向け〉に解釈してみました。】
📑ひつじかい〈見つめるひとに開示される〉絵本『よあけ』を読み解く