こんにちは、もりのひつじかいです。
前回は
ひつじかいの最初の絵本
『もりのしょうぼうだん』が
2020年10月8日に刊行されるという
お話をさせていただきました。
実はこの絵本の判型は
当初の計画では「A5版変形」
ということになっていました。
A5版変形というのは
サイズでいったら、おおむね
ヨコ105~148mm
✕タテ183~210mm
という大きさになります。
「A5版」のベーシックな規格は
「群像」とか「文學界」などの
文芸誌のサイズですね。
変形版はその下の判型であるA6版と
A5版との間の任意の大きさ
ということになるでしょうか。
A5版だと
やや小ぶりな印象を与えるかな
とひつじかいが考えておりますと
実際に仕上がった着彩画を見た編集部から
「B5版に変更しましょう」との連絡が
入ったのです。
ちなみに「B5版」のサイズは
ヨコ182mm✕タテ257mmですから
このサイズ変更によって
絵の迫力はかなりアップするはずです。
とまあ
実際に自分の絵本のサイズについても
このような企画変更がありまして
判型に関し
が然興味がわいてきました。
そこで今回は
絵本のコンテンツと判型との関係
などについて
リサーチしてみることにしました。
出版を考えているあなたには
必見の話題!
と言えるのではないでしょうか?
まずは身近にある絵本のサイズを測ってみました!
絵本の中身(コンテンツ)と
判型との関係(というか必然)
について考察する前に、とりあえず
手元に置いている絵本のサイズを
手当たり次第測ってみることにしました。
すると、どれひとつとして
同じサイズの絵本がないことに
気がついたのです。
驚きました!
ほとんどの絵本が変形版だなんて!
ちなみに計測の結果は
次のとおりです。
※サイズはヨコ✕タテ、単位はmmです。
*150✕158
『よるのとばり きみはひかり』
(Tobariさく/みらいバプリッシング)
*163✕204
『ねえ、なにしてるの』
(きむらゆういち作/偕成社)
*180✕180
『きゅっきゅっきゅっ』
(林明子さく/福音館書店)
*183✕227
『おおきな木』
(S・シルヴァスタイン作/篠崎書林)
*188✕233
『夜、空をとぶ』
(R・ジャレル作/M・センダック絵
みすす書房)
*188✕242
『いやいやバスの3ばんくん』
(砂田弘ぶん/富永秀夫え/小峰書店)
*194✕215
『かくれんぼ』
(きもとももこ作/福音館書店)
*196✕265
『はるにれ』
(写真:柿崎一馬/福音館書店)
*200✕258
『ねむたくなった』
(J・R・ハワード作/あかね書房)
*207✕202
『おやすみなさいサンタクロース』
(舟崎克彦さく/小澤摩純え/理論社)
*210✕243
『ねずみくんのチョッキ』
(なかえよしを作/上野紀子絵
/ポプラ社)
*219✕264
『ベッドのしたにワニがいる』
(E・シューベルト&D・シューベルト作
佑学社)
*250✕234
『ちいさいおうち』
(B・リー・バートン作/岩波書店)
*254✕222
『ちびゴリラのちびちび』
(R・ボーンスタイン作/ほるぷ出版)
*262✕248
『100万回生きたねこ』
(佐野洋子さく/講談社)
*265✕256
『おふろだいすき』
(松岡享子ぶん/林明子え/福音館書店)
まだありますが
もう、このへんでやめておきましょう。
どうですか?
なんとなくお分かりいただけましたか?
同じサイズのものって
全くないでしょう?
絵本をきれいに並べようとしても
凸凹してしまう理由がここにあります。
ちなみにひつじかいが持っている
一番大きな絵本は
以前レビューでご紹介した
『星のふる夜に』(千住博さく/富山房)
で、*262✕320ですね。
タテが30cmを超えています!
子どもたちに人気の
『かいじゅうたちのいるところ』
(モーリス・センダックさく/富山房)も
*252✕235という独特のサイズです。
サイズを計測した絵本を判型別にくくると・・・
◇菊判変形(152✕218)
『ねえ、なにしてるの』
◇B5変形
『きゅっきゅっきゅっ』
『おおきな木』
『夜、空をとぶ』
『いやいやバスの3ばんくん』
『かくれんぼ』
『おやすみなさいサンタクロース』
『ねずみくんのチョッキ』
◇A4変形
『はるにれ』
『ねむたくなった』
『ベッドのしたにワニがいる』
無理やり突っ込んだものもありますが
だいたいこんな感じでしょうか。
そうしますとー
『ちいさいおうち』
『ちびゴリラのちびちび』
『100万回生きたねこ』
『おふろだいすき』
『かいじゅうたちのいるところ』
などのベストセラーは
規格判型外の変形?
というようなことになってしまいますね。
ということは、つまり・・・
絵本をヒットさせたかったら
この規格判型外の変形というサイズを
狙ってみるというのも
ひとつの手かもしれませんね。(笑)
どうして絵本は変形サイズばかりなの?
冗談はさておきまして
いよいよここから本題に
踏み込んでいきたいと思います。
規格外の変形というのは
ご存知の人も多いでしょうが
紙を裁断していく過程で
裁ち落とされてしまう部分が
かなり出るということになります。
それだけ手間もかかりますし
費用もかかります。
それでもなお変形を採用する理由は
いったいどこにあるのでしょうか?
結論を先に言ってしまいますと
「それは絵本だから」
ということになるのだと思います。
これは
あくまでもひつじかいの推論ですが
おそらくその変形サイズというのが
その絵本の絵
つまりビジュアルコンテンツを
最大限に引き立たせるサイズである
ということになるのではないでしょうか。
「判型ありき」ではなく
「コンテンツありき」を選択した場合
ベストなサイズが自ずと導き出される
というわけですね。
『きゅっきゅっきゅっ』は
ひとりの赤ちゃんに
ぐっとフォーカスするために
180✕180の方形でなければならないし
『おふろだいすき』は
小さなお風呂場に
カバやクジラまで登場するわけで
262✕248という
がっしりした重厚なサイズが
必要だというわけです。
そう考えると
絵本のサイズが全て違うという理由も
ストンと胸に落ちます。
もっとも
『からすのパンやさん』みたいに
シリーズで出版されるような場合は
セットでの販促がしやすいように
判型優先で編集されることも
往々にしてあるでしょう。
規格判型外の変形というのは
絵本作家にとっては
ある種のステータスのようなものかも
しれません。
見込みがなければ
それだけの手間とお金を
投入してはもらえませんから・・・。
『もりのしょうぼうだん』の判型について
『もりのしょうぼうだん』は
当初の「A5版変形」という計画から
「B5版」という判型
つまり規格型に変更になったというお話は
冒頭でしました。
この変更で
ヨコが40mm
タテが47mmも拡大したわけですから
ベターな選択だったと思います。
しかし
主題が山火事ということですので
火事現場の臨場感を出すためには
規格に縛られることなく
さらに一回り大きなA4版変形
というサイズがチョイスできれば
さらに面白かったかもしれません。
欲を言ったら
きりがありませんが・・・。
それでも次のチャンスがあったら
そのときこそ
絵(コンテンツ)優先の判型で
勝負できればなと思っています。
たかが判型
されど判型
絵本のサイズはかくも奥が深く
意味深いものなのです。
あなたも
絵本を手にする機会がありましたら
ぜひともその判型に
注目してみてくださいね。
ひょっとすればその判型から
絵本の狙いが
垣間見えるかもしれませんから。
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