こんにちは、もりのひつじかいです。
今日
近くのホームセンターに行きましたら
早くもしめ飾りが売られていました。
クリスマスを飛び越して
いきなりお正月モード全開!ですね。
そういえば
ひつじかいが子どもだったころには
「もういくつ寝るとお正月」
なんていうのどかな童謡が
歌われてましたっけ。
きょうびは
「もうすぐお正月だね」なんて言いながら
お正月をワクワク待っている子ども
なんてのは
ずいぶん少なくなったんでしょうね。
凧あげをしている大人は
たま~にいらっしゃいますが
独楽を回したり
羽子板をやったりするお子さんって
まだいるんでしょうか?
そもそも
お正月に外で遊んでいる子どもを
見かけなくなりましたよね。
ながながとお喋りをしてしまいました。
すっかり
しめ飾りに触発されてしまいまして・・
ということで今回は
日本の正しい?お正月を
真正面から描いたノスタルジックな絵本を
ご紹介しましょう。
『もうすぐおしょうがつ』
西村繁男さく(福音館書店/1989年発行)
です。
あなたにもお正月気分を少しだけ
先取りでおすそ分けいたしますね。
「もうすぐおしょうがつ」という気分を描く
もうすぐお正月。
ひろくんとゆうちゃんが
おじいさんとおばあさんのうちへ
電車で出かけるところから
物語が始まります。
ひろくん家族は犬の一家です。
そういえば
この絵本には人間が登場しません!
おじいさんとおばあさんの家の
お隣りさんは猫の一家ですし
神社の初詣の準備をしている氏子は鹿。
街に買い出しに出かけると
往来を行き来しているのは
くまにうまにぶたにきつねにうさぎに
さるにひつじ。
よく見るとゾウが一匹紛れ込んでいます。
『銀河鉄道の夜』を「猫」だけで描いた
アニメ映画(原画ますむらひろし)を
かつて視聴したことがありますが
人間を登場させずにリアリティを描く
という手法は
的を得ると想定外の効果を
生み出すことがありますよね。
この絵本も
見事にツボを押さえています。
この絵本に出てくるのは
みんな動物なのに
人間以上に人間臭く見えてくるから
なんとも不思議です。
さて
ひろくんとゆうちゃんに遅れないよう
足を早めることにしましょう。
おやおや
商店街は人!(いや、失礼!)
動物たちであふれかえっています。
典型的な下町の風情です。
ウキウキとした喧騒が
画面から聞こえてきそうですね。
カワウソの魚屋さんが
ブリをさばいています。
特大の卵焼きを焼いているのは
ひろくんと同じ犬のお姉さん。
牛がお惣菜を売り
狸が瀬戸物を商っています。
犬の露天商が
凧と羽子板と福笑いを並べています。
ひろくんは凧を
ゆうちゃんは福笑いを
おねだりしたようですね。
二人とも
間違いなく「昭和の子ども!」です。
まさにこの絵本に描かれているのは
もうすぐお正月!的な
ノスタルジックな世界観。
ひつじかいもたっぷりと浸かっていた
昭和40年代日本の
どこにでもあった日常風景です。
しかしそれを、こんなに正面から
まっすぐに描けるのは
やはり絵本というメディアがもつ
優れた特色のひとつではないかと
ひつじかいはしみじみと思うのです。
「もうすぐおしょうがつ」という気分を堪能する
街への買い出しをはさんで
ひろくん一家はお正月の準備に大わらわ。
障子を張り替えたり
大型家具の下までお掃除したり
お屠蘇の道具のほこりを払って
それがすんだらお餅つき!
かまどで火を焚き
せいろで蒸して
杵と臼で
ぺったん、ぺったんとつくのです。
つきたてお餅はみんなで丸めて
鏡餅をつくります。
子どもはお粉で遊んで、まっ白け。
そうしている間にも
台所では「おせち」の準備が着々と進行。
ちょぃっと煮物を、つまみ食い。
(お行儀が悪いねえ~。)
神棚にお神酒を供え
玄関にしめ飾りを飾り
さあ
では、銭湯に繰り出すぞう!
千客万来。
先に来てたさるとおおかみが
湯船のなかで
都々逸なんかをひねっています。
銭湯で一年の垢を落としたら
年越し蕎麦で早めの夕食。
あとはテレビで
「紅白歌合戦」を見て・・・。
といきたいところですが
この世界にはテレビはなさそうです。
テレビがないので
大晦日(おおつごもり)が
静かに暮れていきます。
今夜だけは
子どもが遅くまで起きていても
叱られることはありません。
みなでお寺にお参りし
除夜の鐘をついて
夜更けの道を帰ります。
やれやれ
ひろくんとゆうちゃんは
あそび疲れて
お父さんとお母さんの背中で
おねんね。
あたらしい歳がはじまりました。
めでたしめでたし。
と
この絵本を読むだけで
もうすぐお正月!気分が
じっくり堪能できるのです。
昭和の正しい?お正月を知っている
ひつじかいには
ページをめくるだけで
「あのころの気分」が蘇ってきます。
この絵本は
そんな「気分」を描くために
人をみな動物にしてしまったのです。
そういうジャンルがあるのかどうか
詳しいことはわかりませんが
『もうすぐおしょうがつ』
と題したこの絵本は
雰囲気を納めた〈記録絵本〉
とでも呼べるのではないでしょうか。
ちなみに
平成生まれの娘に
この絵本の感想を求めたところ
かつては
そういうお正月があったんだなあ
お正月の本当の気分ってこうなんだなあ
っていうことがわかって
とてもいい絵本だね。
との答えが返ってきました。
お正月が
あまりにも味気なくなってしまったと
お嘆きのあなた。
そんなあなたに贈る「お年玉」です。
この絵本があれば
いつでもどこでも
〈こころはお正月!〉ですね。
でも
絵本の中だけではさびしいというあなた
正しい?「昭和のお正月」を
毎年少しずつ
復元してみたらいかがでしょうか?
テレビを消してみるだけでも
静かな大晦日が還ってくるかも・・
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