亡き息子へ!オリジナル詩集から「君が教えてくれたこと」

君が教えてくれたこと 詩・ポエム
君が教えてくれたこと

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

ここまで6回にわたりお伝えしてきた
ぼくのオリジナル詩集
『君のいない朝』から
引き続きご紹介をしていきます。

 

このメッセージが
大切なご家族を
喪ってしまったあなたに
いつの日か届いてくれることを
願っています。

 

なお
これまでの記事は
こちらからご確認ください。

 

『君のいない朝』(その1)

『君のいない朝』(その2)

『君のいない朝』(その3)

『君のいない朝』(その4)

『君のいない朝』(その5)

『君のいない朝』(その6)

 

桜を植えよ

前回お伝えした
息子の四十九日が過ぎるころ
桜前線は例年より十日も早く
弘前のあたりを北上していました。

 

夏も近づく八十八夜が目前
というような
そんなタイミングで
唐突にぼくは
「桜を植えたい!」と思ったのでした。

 

「思った」というのは
正確ではないかもしれません。
「桜を植えよ」という声を
突然聞いたように感じたのでした。

 

それはなんだか
天から降ってきた声のようにも
思われました。

 

いま桜を植えておけば
いつか花が咲くだろう
たとえお前の息子はいなくても
いつか花は咲くだろう
その花を愛でながら
息子のことを思うがよい。

 

天からの声は
そんなオラクルを告げているようにも
受け取れるのでした。

 

すぐにぼくは
桜の苗木を扱っているホームセンターを
何件か「はしご」して回りました。

そうして
染井吉野と
福桜
それから花桃(バラの仲間)を
それぞれ1本ずつ買い求めたのでした。

 

あとから考えれば
天の声は
ぼくに桜を植えるよう仕向け
息子へと傾き過ぎた想念を
四散させようと
思慮されていたのかもしれません。

 

これは
そんな心持ちでしたためた
一遍です。

 

 

ツリー うつくしいゆめのように

 

なくのはよそう

きみのそうしつをなげくのは やめよう

みずからの ひを せめるのは

もうなしだ

きみはじゆうになったのだ

みずからのぞんで じゆうになったのだ

ならばぼくらも

じゆうにならねばならぬ

 

さくらを うえよ

さくらを うえよ

てんからそんなこえがふってきた

さくらをうえよと

 

これからなんねんも

なんねんも

なんねんも

このきせつになると

ぼくらのさくらが さく

きみのえがおのように さくらがさく

ぼくらは

きみのえがおにつつまれて

このきせつをすごすのだ

 

さくらが さく

さくらが さく

ぼくらのきせつのうえに さくらがさく

桜幻想

やがてすべては

かれんな はなふぶきとなり

つぎのきせつをめざして

まいあがってゆくだろう

うつくしい ゆめのように

まいあがってゆくだろう

 

そらたかく

そら たかく

まいあがってゆくだろう

 

息子を断捨離?

ぼくの植樹は
桜だけでは終わりませんでした。

 

桜の次には
赤と白のハナミズキを
それぞれ1本ずつ植えました。

それから
知人からおくられたオオデマリを1本
鉢植えの赤い紫陽花を庭に降ろし
青い小さな花をつけるネモフィラを
3つのプランターに定植しました。

 

庭いじりに熱中する一方で
ぼくは
あえて息子の遺品を身につけ
息子への思いを断捨離しようと
あれこれ試みたりもしました。

ところが
あがけばあがくほど
かえって息子に近接してしまい
息子のことが少しだけ分かったような
そんな気分になったりもするのでした。

 

これはそのときの心中を記した一遍です。

 

 

ツリー 差異

 

君の洋服を着て

君のベルトを締めて

君の靴を履いて 

出かけてみる

ポケットには君の財布が入っている

 

君を断捨離しようと誓いながら

君に近接しようとしている自分がいる

君にあえて近接することで

君から遠ざかろうと試みる自分がいる

 

君の服は少々きつい

君のベルトは顕(あきら)かに短い

君の靴は堅すぎる

そうして

君の財布はなんだか重たい

財布

似たような体型の君とぼくだが

このわずかな差異が

生き方の差異でもあったに違いない

 

君の洋服を着て君のベルトを締めて

君の靴を履いて

君のことがすこしわかりはじめている

君の気持ちがすこしわかりはじめている

君との差異を

おだやかに受け入れはじめている

 

君のことが

もっともっと好きになっている

 

いま、いまがいい!

ある晩
息子が欠けた食卓で
遅い夕食を摂っていたときのことです。

娘が
レンタル中のDVDを視聴したいと
言い出したんですね。
時間も中途半端だし
それに宿題も片付いない様子でしたので
「明日にしよう」
と提案しました。

すると娘が唐突に言い放ったのです。
「いま、いまがいい!」
てね・・・。

 

一瞬
ぼくはわが耳を疑いました。
なにか
聞き間違えをしたのではないかと。

だって
そのフレーズは
幼いころの息子の
十八番でしたから・・・。

 

あとでね。

明日ね。

土曜日にね。

 

と先送りしようとするぼくらに向かって
息子は
幼い声を振りしぼり

 

いま、いまがいい!

いま、いまがいい!

 


何度も何度も訴えたものでした・・・。

 

その
息子の口癖を間近に聞いて
ぼくの心は
一足飛びにはるか昔へと遡り
幻想のなかの息子と対峙していました。

そうして
その瞬間に
ぼくは気がついたのでした。
息子はそんな昔から
ぼくらに
ある大切なことを
教えてくれようとしていた

ということに・・・。

 

 

ツリー 君が教えてくれたこと

 

会話のはてに

娘がとつぜん言い放った

 

 いま、いまがいい

  いま、いまがいい

 

ぼくの思念は

一足飛びに二十年という歳月を遡上し

過去の

とある地点に正中する

 

あとでねと

ぼくらがいうと

幼い君は駄々をこねた

 

 いま、いまがいい!

  いま、いまがいい!

 

ぐうぜんにも

いま

ここで

あのときのフレーズを

きいた

 

そのことばに

どんな意味がこめられているのか

あのころのぼくらは

しらなかった

 

 いま、いまがいい!

  いま、いまがいい!

 

いま というときが

どんなにたいせつなものであるか

いまのぼくらにはわかる

いまだからわかる

 

ほんとうは

いま 

という瞬間しかないのだということが

ぼくらにはわかる

いま だからわかる

 

そのことばは

幼い君からの

サヨナラだったということが

ぼくらにはわかる

いま だからわかる

 

 いま、いまがいい!

  いま、いまがいい!

君

いま やれることは

すべてかなえてあげるがいい

いま やれることは

すべてかなえてあげるがいい

 

君が教えてくれたのだ

明日ばかり見ていた

ぼくらに

 

 

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