亡き息子と観た「わたしを離さないで」君の願いは何だったのか?

わたしを離さないで 詩・ポエム
わたしを、離さな-

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

今日は
ここまで3回にわたりお伝えしてきた
ぼくのオリジナル詩集
『君のいない朝』から
引き続きご紹介をしていきます。

 

『君のいない朝』(その1)は
→ こちらから確認いただけます。

『君のいない朝』(その2)は
→ こちらから確認いただけます。

『君のいない朝』(その3)は
→ こちらから確認いただけます。

 

龜虫が・・

今回お伝えするポエムは

「若すぎる遺影」
「是非」
「龜虫」
「わたしを離さないで」
「草の実」

の5編です。

 

自ら命を絶った息子の初七日から
四七日(よなぬか)までの間に書き留めた
こころの〈断片〉です。

 

顧みれば
ぼくはこのころ
仕事にも行かず
息子の遺影に向かって日がな一日
何事かを語りかけていました。

 

いったい何を語りかけていたのか
その大半は
いまとなっては
思い出すことができません。

 

ここにクリップされた
ほんの数編の詩が
そのころの心象を
わずかに伝えるのみです。

 

このときのぼくはまだ
なにも知りませんでした。
ほんとうの哀しみは
あとからやってくるのだということを。

 

 

ツリー 若すぎる遺影

 

君の遺影が若すぎる

 

どうしてぼくは

この写真を選んだのか

 

澄んだ目で

まっすぐこっちを見つめているのは

十五の君だ

単純に引き算をしても

九年も前の写真ということになる

 

 

九年も前の君が

いまぼくらの目の前にいる

 

 

大人になった君の写真だって

本気になってさがせば

きっとみつかったはずなのに

なぜかぼくはそうしなかった

 

大人になった君と

うまく対話ができなかった自分への

諦めからか

ぼくを飄然と追い越していった

君への畏れからか

それとも

おとなになった君の遺影では

デスマスクを彷彿とさせるからか

 

十五の君ではいかにも若い

 

  いい気なものだ

  君の前ではいつだって

  ぼくは父親気取りだ

 

赦してくれ

息子よ

父親になりそこねた

父親を

 

 

ツリー 是非

 

君の遺影をみつめていたら

なにかひとこと言いたくなった

若すぎる遺影に向かってつぶやいた

 

  君も苦しかったのだな

  しかしおれたちも苦しかったのだ

  それでもおれたちは

  きみと

  きみと

  きみといっしょにいたかったのだ

 

すると

その声に呼応でもするかのように

隣室で

物音がした

 

君の是?

それとも非?

 

判然とはしないが

君がこたえてくれたことに

まちがいはないのだと

おれはつよく信じた



カメムシ

 

ツリー 龜虫

 

四つめの塔婆をおさめに墓に参った

般若心経を一巻誦経する

 

わたくしの硬い声が

浅春の山肌につめたく木霊する

 

息子と息子の思い出を断舎離すると

宣言したばかりだというのに

唐突に墓前で泣き崩れた

 

 

家に帰ると

息子の霊前に龜虫が一匹止まっていた

 

ふと

この虫は息子なのだと思った

息子の魂が

転写された姿なのだと思った

 

おまえは〈きみ〉なんだろう

そうなんだろうと

声に出して語りかけた

 

龜虫は

かすかに触覚をふるわせ

おじぎをしたように見えた

 

 

わたしを離さないで

カズオイシグロ原作の映画
『わたしを離さないで』を
息子とふたりで観たことがありました。

 

息子はこの映画に
つよい衝撃を受けたようでした。

すぐに原作を手に入れました。
(それも原初と翻訳本と2冊も!)
さらに
DVDまで購入するという
実の入れようでした。

 

しかし
とうとうぼくらは
原作の中身について
語り合うことはありませんでした。

 

この物語の舞台は
近未来のイギリスです。
不老長寿を希求する人間の欲望は
クローンによる臓器提供を是認し
ヒトの臓器が
あたかもプラモデルのパーツのごとく
公然と
調達できる社会が出現しています。

 

そんな苛烈な物語を語るのは
クローンのひとり
うら若き女性です。

彼女は
今はまだ
臓器提供を続ける仲間たちの
心のケアを担当していますが
いずれ近いうちに
「その順番」がやってくるのです・・。

 

クローンにも
人間の心があるのだということを
観客は感じ取ります。
人間とクローンとを分けるものとは
いったい何なのか?
そんな重たい問いを発したまま
映画は幕を閉じます。

 

息子が
この映画のどこに共鳴していたのか
とうとう訊くこともなく
彼とぼくとの物語は
突然幕を閉じたのでした。

 

 

ツリー わたしを離さないで

 

かたくにぎりしめた君の手

もう

開かない

 

砂丘を走って

走って

見つけたものといえば

打ち捨てられた老朽船

海は

遥か彼方に退いてしまったらしい

 

 

Never let me go

 

 

かたくにぎりしめた君の手

二度とにぎり合えない君の手

いつか離してしまった君の手

二度とにぎり合えない君の手

 

 

Never let me go

 

 

君は

何を

願っていたのか

 

 

手がかり

ある日
息子の遺影に手を合わせていると
どうしたわけか
畳の上に
草の実が一粒落ちていたのです。

 

いったい
どこから入りこんだものやら・・・

誰かの洋服に付着して
偶然持ち込まれたものではないのか?

 

いいや
誰かが故意に持ち込んだのでは・・。
いったい誰が・・?

 

などと
ひつじかいの思念は
光速で転回し
ひとつの思い出へと結実するのでした。

 

たった一粒でも
手がかりがあれば
息子の全てを
思い出すことができそうでした。

 

そうしてしまいには
ひつじかいの思念は
ある確信へと至ったのでありました。

 

 

ツリー 草の実

 

君の霊前に据えた座布団のわきに

草の実が一粒落ちていた

だれの服について運ばれたものか

妙に心に引っかかる

 

そういえば君が亡くなる前のこと

洗いたてのシャツに草の実がついていた

とかで

どこに干したものかと

難詰されたことがあった

 

そのときぼくはなんとこたえたか

 

  素肌に草の実はいたい

  肌理が鉤の手に引っかかれる

  一粒の種が強靭な異物に変わる

 

君の霊前に据えた座布団のわきに落ちてい

た草の実を拾いながら

ぼくは

これは君のシャツからこぼれ落ちたもので

はないかと

ひとり

夢想している。

 

 

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