亡き息子との終わりなき対話 オリジナル詩集『君のいない朝』

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

今日は
少し前にご紹介した
ひつじかいのオリジナル詩集
『君のいない朝』から
引き続き何編かをご紹介していきます。

 

自死により
突然息子を喪ったひつじかいは
彼がいないという現実を前に
ただ慟哭し続けることしか
できませんでした。

 

哀しみが
ひつじかいにペンを握らせました。

書くことで
その現実を
受けとめようとしていたのかも
しれません。

 

もちろん当時のひつじかいには
そんな気の利いた解釈など
できはしませんでしたが・・

 

前回の記事は

こちらからご確認いただけます。

 

それでは『君のいない朝』から
ひつじかいが書きとめた順番に
お伝えしていこうと思います。

 

あなたの胸に
少しでも響くものがあれば
幸いです。

 

『君のいない朝』から

息子亡きあと
ぼくは呆けたように慟哭しながら
彼への無言の問を発し続けます。

 

なぜ
おれより先に逝ってしまったのか

 

なぜ
こっちよりむこうの方がいいと
考えたのか

 

なぜ
自らの命を絶つという凄烈な行為を
しずかに実行し得たのか

 

なぜ
なぜ
なぜ

 

この問答には終わりがありません。
答えてくれる相手は
もうこの世にはいないのですから。

 

 

ツリー なみだの意味

 

ないたら あかん

ないたら あかん

 

ここでないたら

決壊する

 

おれはそうおもって

嗚咽をかみころす

 

どうしてなみだはとまらないのか

 

そもそもおれは

君のためにないているのか

それともおれは

おれじしんのためにないているのか

 

君においてきぼりをくらった

おれじしんのために・・・

 

なくことに

どんな意味があるというのだろう

なみだには

どんな意味があるというのだろう

 

君はこたえてはくれまい

そればかりか

なにひとつ

てがかりをあたえてもくれまい

 

ふとした拍子になみだがこみあげてくる

そうしておれは、また

君との

終わりのない対話にはいっていく

 

 

ひつじかいの無声慟哭をよそに
息子を葬送するための儀式は
段取り通りに進み
人は集まり
人は去り
やがて
遅い昼(ひるげ)がやってきます。

 

相変わらず
木偶人形のようにテーブルにつく
ぼく。
でも、お腹だけは減っているのです。

それがまた
無性に哀しくて・・

 

 

ツリー たくあん

 

たくあんで飯を喰った

たくあんで飯を喰った

 

たくあんで飯を喰っていると

君の不在が胸に迫った

 

しょっぱいたくあんが

よけいにしょっぱくなる

 

泣いた赤鬼みたいな形相で飯を頬張った

飯を頬張った

飯を頬張った

 

腹が減っているのかいないのか

わからなくなった

 

 

息子の葬儀が終わり
初七日も過ぎ
親しい者たちはみな帰っていきました。

 

ぼくと妻と娘が遺され
夜はしずかに更けてゆきます。

 

そんなとき
ふと
息子の気配を感じます。

 

ああ、でもそれは
空耳なのでしょうか?
それとも・・

 

 

ツリー 空耳

 

妹には

兄の足音がきこえるという

 

妻には

息子が鳴らすチャイムがきこえるらしい

 

そういうわたくしの耳には

彼が開けたてする扉の音がきこえてくる

 

 

 わがやのトイレは

 いまは亡き父のために

 バリヤフリー仕様となっており

 ドアを引戸に改修してあるのだった・・

 

 

どんな音でもかまわない

その音には

生前の彼の「くせ」みたいなものが

転写されているはずだから

 

ひょっとすれば

すべては空耳なのかもしれない

すべてが空耳であったとしても

それはそれでよい

いまこの瞬間に

彼の存否を指呼できるものであるならば

おおきく踏み外すこともあるまい

 

されば息子よ

こころゆくまで日日の音を奏でよ

思いのかぎり彼岸の竪琴をかき鳴らせ

 

われらがこころの糸を

すずやかにふるわせよ

 

〈時〉は何も解決してはくれない

息子の死からすでに1年半が過ぎました。

 

哀しみが癒えたかと問われれば
正直に「ノー」と答えるでしょう。

 

〈時〉が傷を癒やしてくれるという
伝説は
ある微細な部分では正しく
圧倒的に多大な部分では
不正確だということを
あらためて理解しました。

 

今でも
息子を思い出さない日はありません。
少ないときでも一日に百回以上は
彼のことを考えています。

彼の心情に立って
彼の思考をトレースしています。

夢のなかで
彼を思っていることもあります。

 

でもこの1年半の間に
見えない涙は
少しずつ乾きはじめています。

 

ですからこうして
こんなセンスティブな話しを
あなたに語りたいと
思ったのかもしれません。

 

おそらくこれが
〈時〉に癒やされた微細な部分だと
ぼくは考えています。

 

これからも時々
『きみのいない朝』から
詩をご紹介していきたいと思います。

 

あなたの人生には
何の関わりもないことかもしれませんが
お読みいただければ
うれしいです。

 

※こちらの記事もいかがですか?
 詩集『君のいない朝』全編をまとめてみました。

【哀しみの喫水線を超えてあふれ出た、そんなぼくの心の声です。①】
📑「息子の死」から立ち直れない!そんなぼくは詩を書いた・・

【もぬけの殻になってもエンピツを握る力だけは残っていました。③】
📑息子を先に〈おくる〉ということ・・詩集『君のいない朝』から

本当の哀しみは遅れてやってくるのだということを知りました。④】
📑〈家族の死を深く見つめて〉ひつじかいの詩集『君のいない朝から』

【子どもに先立たれるという不条理を言葉に置き換えて。⑤】
📑〈子どもに先立たれるということ〉ポエム集『君のいない朝』から

【ぼくのこの詩は傘あるいはシェルターのかもしれません。⑥】
📑「書くことで心の平衡を保って」ポエム集『君のいない朝』から

「今この瞬間しかない」ということを息子から教えられて・・⑦】
📑亡き息子へ!ひつじかいのポエム集から「君が教えてくれたこと」

花びらは散っても花は散らないという言葉をシェアします。⑧】
📑自作ポエム集『君のいない朝』から「みどりに想う」ほかをシェア

【山霧にそして蝉しぐれのなかに息子は偏在している・・⑨】
📑息子が幻視した怖れ(コビット19)は現代版ハルマゲドンか?

【このパンドラの函もいつかは開かなければならないでしょう。⑩】

📑石地海岸はパンドラの函~君のいない夏に思いを馳せて~

【遺されたぼくら夫婦には様々な呼び名が与えられて・・・⑪】
📑本当の哀しみは少し遅れてやってくる『君のいない朝』(その11)

【いつまでも立ち止まっていたら、きっと息子は悲しむだろう
📑さようなら息子よ『君のいない朝』からのぼくの卒業

 

 

 

 

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