さようなら息子よ『君のいない朝』からのぼくの卒業

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

これまで
11回にわたりお伝えしてきました
ぼくのオリジナル集『君のいない朝』。

 

ここまでのバックナンバーは
次のリンクからご覧いただけます。

 

『君のいない朝』(その1)

『君のいない朝』(その2)

『君のいない朝』(その3)

『君のいない朝』(その4)

『君のいない朝』(その5)

『君のいない朝』(その6)

『君のいない朝』(その7)

『君のいない朝』(その8)

『君のいない朝』(その9)

『君のいない朝』(その10)

『君のいない朝』(その11)

 

これまでお読みくださったあなたには
心より感謝申し上げます。

本シリーズは今回で最終回となります。

 

ぼくはこの詩集を
〈紙の詩集〉というかたちで
出版したいと考えています。
出版社との今後の協議によりましては
2021年中には出版の目途が
立つかもしれません。

 

出版が決定いたしましたら
このブログでお知らせしたいと
考えています。

 

 

さて、今回は
「さようならロングチキン」
「嗚呼量子力学」
「卒業」
の3編をお伝えさせていただきます。

 

最後の最後に

「息子と息子の思い出から卒業する」

と宣言するぼく。

 

『君のいない朝』の最終回
どうぞ終いまでお読みください。

 

さようなら、ロングチキン

ツリー さようなら、ロングチキン

 

はじめて息子の夢をみた

と妻がうれしそうにいった

 

息子はすっかり「いいひと」になっていて

とても従順だった

ハグもさせてくれた

ハグをしたら泣き笑いしていたって

 

泣き笑いということばが

小骨のように刺さったが

妻は有頂天で

きょうは二時間しかいられないって

いうから

一生懸命話しをした

一生懸命話しをしたのに

何を話したか忘れちゃった

 

夢のなかでしか会うことができない

息子だが

ぼくはすこしだけほっとして

彼の安息を確信する

 

ロングチキン

チキン

それが君のあだ名

 

チキンって呼んだのは

親しみをこめてのことなのだ

ロングという接頭詞の意味は

命名者の娘にもおそらくは分かるまい

 

ちなみにぼくのあだ名はショートチキン

これも娘が命名した

その昔ショートホープという名前の

煙草があったが

ノンセンスなところが

同じくらいにいかしている

 

さようなら、ロングチキン

ショートより先に逝ってしまった

ロング(息子)よ

君は決して

腰抜け(チキン)なんかじゃあない

 

 

 

ツリー 嗚呼量子力学

 

哀しい詩(うた)ばかり書いていると

哀しい詩しか書けなくなるというのは

ほんとうか

 

哀しみは 哀しみを 是認する

それは それを 是認する

哀しみ

哀しんでばかりいると

哀しみは増殖し

あらたな哀しみをまわりに引き寄せる

 

引き寄せられた哀しみは

コンペイトウのように

ぷつぷつ成長をはじめる

コンペイトウ

哀しみは

哀しみという糖菓子を食べて肥大し

気がつくとぼくのまわりは

哀しみだらけになっている

 

やがてぼくの目には

哀しみばかりが映し出されて

挙句の果てには

毎日悲嘆に暮れることになる

 

最後はおそらく

失われたものへの愛惜の念に

絡め取られて

悲哀の坩堝に

真っ逆さまに墜落することになるに

ちがいない

 

量子力学がそういっているのだから

間違いはないはずだ

嗚呼

 

だから息子よ

ぼくはもう

哀しい詩を書くことを

やめにしよう

 

 

 

ツリー  卒業

 

見えない

 聞こえない

  感じない

君は風

 ただの気配

  思い違い

   空耳

    遠い空

なんとでも言うがいい

へ 強がり あっかんべえー

 

怖れているの 

それともただの偏屈 負け惜しみ

うるさいなあ ふわふわ

綿菓子のくせに お祭りの

 

山の音だよ

 凧が風切る音かも

風の音

  蛙の声かな

   それとも鐘の音

    頭足類の鳴き声ってことは

ない?

いいや ふわふわ 綿菓子だよ

綿菓子が唸っているのだ

 

誰が食べるのだろう 

お祭りは終わったんだ

  捨てなさい

   それは棒だ

    ただの棒

     爪楊枝

      枝だね

       柳の

        ドロヤナギ

 

ないているの

わらっているの

  うるさいね お祭りは

   終わったんだ

 

解約したよ なにもかも アイフォンも

キャンセルじゃないのか いいや解約

キャンセルだろう

 リセット

  白紙撤回

   元え!

頭足類は嫌いだったんだ あいつ

お祭りは終わったんだ

もとの木阿弥

 

おれの名前が書いてあった

え 名前 頭足類の?

ふわふわ 綿菓子だろ 

お祭りは終わったんだ

しょうきだよ 正真正銘の生命保険

正氣

 本氣

  やる氣

   いつかはドロー

 

見えない

 聞こえない

  感じない

君は風

 ただの気配

  思い違い

   勘違い

    空耳

     王様の耳

      ロバの耳

       あるいはおれ様の耳

耳だね 大切なのは耳だ 耳垢だ

お祭りは終わったんだ

 

しりごみしてる

 腰が引けてる

  去勢

   じゃなくて虚勢張ってる

    それとも巨星が好きとか

隠れているだけ

 蓑虫みたいにね

  冬支度さ

   冬でもないのに

    干からびた龜虫

     縁側の隅

 

おれ 卒業するよ

いつ

 いま

ひとりで

 ああ

 

そう

 あの子から

息子

 

風の音

 雲の音

  空の音

 

卒業するよ

 あの子から

 

それからその次へ

詩集『君のいない朝』を書いてから
2年半が経とうとしています。

 

あれから2年も経つというのに
「卒業」なんていうタイトルの
こんな詩まで書いていたというのに
ぼくは今でも
突然あふれ出る涙を
おさえることができません。

 

なあんだ
あのころと少しも変わってないじゃん!

 

いいえちがいます。
そんなふうに
何度も何度も涙を流しながら
それでもぼくは
歩いてきたのです。

 

『君のいない朝』から
その次へ向かって。

 

定職に就くのをやめました。
お金に執着するのをやめました。
エゴを押し付けることをやめました。

だから貧乏です。

 

しかし人生には

もっと大切なものがあるということに

大切なものを失って

初めて気がついたのでした。

 

ぼくらの「その次」は
いったいどこへ
続いているのでしょうか?

 

詩集『君のいない朝』は
そんなぼくらの歩みを記した
ささやかなマイルストンです。

 

ここから
ぼくらの新たな旅が始まったのです。

 

旅はまだまだ続いています。

 

またいつか
『君のいない朝』を書き継ぐときが
やってくるかもしれません。

 

でも
いまはまだ
ただもくもくと

歩いていきたいと思っています。

 

 

※あわせてこちらもお読みください。 
↓↓↓

息子を亡くしたひつじかいの慟哭をポエム集にまとめました。①】
📑ポエム&エッセイで紡ぐ息子へのオードひつじかいの『君のいない朝』

【哀しみと対峙するひつじかいの心の軌跡をお読みください。②】
📑ひつじかいのポエム&エッセイ『君のいない朝』をあなたへ

【もぬけの殻になってもエンピツを握る力だけは残っていました。③】
📑〈自死した息子に贈る〉ポエム&エッセイ『君のいない朝』から

本当の哀しみは遅れてやってくるのだということを知りました。④】
📑〈家族の死を深く見つめて〉ひつじかいの詩集『君のいない朝から』

【子どもに先立たれるという不条理を言葉に置き換えて。⑤】
📑〈子どもに先立たれるということ〉ポエム集『君のいない朝』から

【ポエムはある種の傘あるいはシェルターだったのかもしれません。⑥】
📑「書くことで心の平衡を保って」ポエム集『君のいない朝』から

「今この瞬間しかない」ということを息子から教えられました。⑦】
📑亡き息子へ!ひつじかいのポエム集から「君が教えてくれたこと」

花びらは散っても花は散らないという言葉をシェアします。⑧】
📑自作ポエム集『君のいない朝』から「みどりに想う」ほかをシェア

【山霧にそして蝉しぐれのなかに息子は偏在している。⑨】
📑息子が幻視した怖れ(コビット19)は現代版ハルマゲドンか?

【パンドラの函もいつかは開けなければならないでしょう。⑩】

📑石地海岸はパンドラの函~君のいない夏に思いを馳せて~

【遺されたぼくら夫婦には様々な呼び名が与えられて・・・⑪】
📑本当の哀しみは少し遅れてやってくる『君のいない朝』(その11)

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