Marie Claire!このタオルは 亡き息子の汗を知っている

シャワーの水滴 詩・ポエム
シャワーの音も知っている・・

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

今日は
ここまで5回にわたりお伝えしてきた
ぼくのオリジナル詩集
『君のいない朝』から
引き続きご紹介をしていきます。

 

よろしかったら
さいごまで
おつきあいいただければ
さいわいです。

 

前回までの記事は
次のリンクからご覧いただけます。

 

『君のいない朝』(その1)

『君のいない朝』(その2)

『君のいない朝』(その3)

『君のいない朝』(その4)

『君のいない朝』(その5)

 

息子の七七日〈なななぬか〉を迎えて

今回お伝えする詩は
息子の七七日(四十九日)前後に
したためた5編です。

 

このころぼくは
はじめて息子の夢を見ました。
夢の中の息子と
何やら言葉を交わしたりもします。

 

それで、ようやく
息子の身辺を片付けてもいいような
そんな気持ちになり
彼のノートの片隅に
一遍の走り書きを見つけたのでした。

 

また
彼が亡くなる前日に
督促状をもらっていた
市民税や国民年金の掛け金を
完納していたことも分かりました。

 

そんな折り
脱衣所のタオル掛けに
息子愛用のバスタオルが
掛けたままになっていることに目が留まり
これは
「彼の肌の水滴を知っているはず」と
物思いに沈んだりもしました。

 

こんなふうに
日々刻々の心の動きを
無心に書き留めることで
息子の喪失という究極の出来事に
時にはバランスを崩しながらも
どうにか平衡を保ち続けることが
できたのだと思います。

 

顧みればこれらの詩は
ある種の傘
あるいは〈シェルタ-〉の役目を
果たしてくれていたようです。

 

 

七七日の朝が静かに明けました。
いよいよ息子が
あの世へ旅立つ日がやってきました。

しかし
あいにくの空模様。

心は〈仮定形〉の細道を
執拗に行ったり来たりしながら
最後まで揺れ続けます。

 

妻とふたり
墓前に菊花をお供えし
それでようやく
ひとつの区切りをつけたのでした。

 

オリジナル詩集『君のいない朝』から

ツリー イクスピアリエンス

 

24歳という若さで旅立った君に

夢のなかで父は問うた

君はなにをなすためにやってきたのかと

夢のなかの君はてらいもなく

もう一度愛を確かめたかったのだと

こたえた

 

モウイチド

アイヲ

タシカメタカッタノダ

 

そうか

とぼくはこたえた

君はそんな意図をもってやってきたのか

で君がいう愛ってやつは

ここで見つかったのかい

ぼくは重ねて問うたが

夢のなかの君はそれ以上は語らない

 

イクスピアリエンスという言葉が

すばやくぼくの胸をかけぬけた

経験

愛を確かめるという経験

君にとって

究極の経験となったかもしれない 

地上(ここ)での愛

イクスピアリエンス

 

君ははたして

その願いを叶えることができたのか

祈り

祈ろう

祈りつづけよう

ぼくらの愛が

君のなかで結実するように

 

24歳の君が追い求めた

愛という経験

イクスピアリエンス

 

君の願い

ひとつぶの種

 



ツリー 夢のつづきを

 

ノートの片隅に君の走り書きを見つけた

遺書もメッセージも残さなかった君の

貴重な文字の連なり

 

ピラミッドをつくる夢を見た

 

走り書きにはそうあった

 

遠い昔にピラミッドを構築した夢なのか

新たにピラミッドを建設する夢なのか

委細はわからない

ピラミッド

わかっていることといえば

ほとんど手がかりを残さなかった君が

わざわざ

夢の話しをしたためたという事実

 

父は思うのだ

その夢には

君の心に響く何かがあったにちがいない

君の想像力をかきたてる何かが

その夢にはあったのだと

 

ピラミッドをつくる夢を見た

 

そう書き残して君は旅立った

夢のつづきを

誰にも語ろうとはせずに

 



ツリー 突拍子もないこと

 

息子よ

おれはこのところ元気にやっているよ

母さんはおまえが

そっちでなにをしているか

まいにち心配ばかりしているがね

 

それでも

涙がこぼれ落ちそうになったときには

なにか突拍子もないことを

かんがえればよいのだってことも

おれはちゃっかり学んだりしたんだよ

たとえばそうだな

思いもかけないところから

おまえが母さんに宛てて書いた

クリスマスカードが出てきて

坂をころがり落ちるように

おまえのもとへと傾斜しはじめたとき­-

 

クラムボンはわらったよ。

クラムボンはかぷかぷわらったよ。

 

なんて

『やまなし』の一節を唱えればよいのだ

そうしてクラムボンのことについて

想像しはじめるのだ

そうすればさ

そうすればね

あっといまにおれは

小さな谷川の青じろい水底にいて

二匹の蟹の子らが吐き出す

まるい泡のつぶつぶと

かぷかぷ戯れることができるって算段だ

お魚はどこへいってしまったのか

なんてことはかんがえてはいけない

お魚のことをかんがえてしまったら

めぐりめぐっておまえのことを

かんがえてしまうかもしれないからね

 

息子よ

おれもずいぶん変わったろう

まえよりも

いくらかつよくなったろう

 

おまえが亡くなる前日に

督促をもらっていた国民年金保険料を

納にいったなんて事実を知ったからって

おれはいささかも動揺


し な い よ

 



ツリー Marie Claire

 

誰だい

タオルをしまっておこうなんて

言い出したやつ

使い古しだよ 糸もほつれて

 

青だったはず かつては 色あせて

シミもあったりして

紙魚(しみ)ではなくて 

汚点(しみ)だからね

美しくないよ このタオル バスタオル

 

女性のなまえなんかつけて 

気取っている いいや

いいのだ これ あの子のタオル

バス タオル

ずいぶん肩入れしていたな このタオル

かれこれ 9年も使ったはず

 

太陽にあてたし 風にもあてた

にわか雨にもあたった

お気に入りだった 汗 汗だよ!

いつも最後はこのタオル

 

あの子の肌の水滴 知っている 

糸もほつれて

 

藍色 いいや いまは青

いいや それも薄れて 

名前もない色 いまは

宙に浮いた色 空 月 銀河 流星

 

ねえこれ

しまっておこうと思うのだ

だって流星だよ これ 奇跡

軌跡さ 

これ あの子の肌の水滴 知っている

夏 冬 光 そうさ 光さ

水滴

シャワーの音も 知っている

 



ツリー 降水確率

 

しずかな朝がやってきた

 

きょうが君の七七日(なななぬか)

ということでもなければ

わすれてしまいそうなくらい

ありふれた朝だ

 

降水確率70%

いつ降りだしてもおかしくはない空もよう

墓参のころには雨になるにちがいない

 

誰が名づけたものか

降水確率とは言い得て妙だ

天のめぐみもいまや確率で表現できる

というわけだ

 

  降るか降らぬか

  降らぬか降るか

 

ぼくらの命とておなじことか

生存率ということばが すでにあった

 

  死ぬか生きるか

  生きるか死ぬか

シャツ

かけちがえてしまったシャツのボタンを

もういちどかけなおすことができたなら

君の生存率も

飛躍的に高まったのではないかと

ぼくらのエゴイズムは

仮定形の隘路に迷いこむ

 

降水確率70%

いつ降りだしてもおかしくはない空もよう

 

のこされたちちははのつとめとして

君に手向ける菊花をそろえた

 

 

※あわせてこちらもお読みください。 
↓↓↓

【哀しみと対峙するひつじかいの心の軌跡をお読みください。】
📑ひつじかいのポエム&エッセイ『君のいない朝』をあなたへ

息子を亡くしたひつじかいの慟哭をポエム集にまとめました。】
📑ポエム&エッセイで紡ぐ息子へのオードひつじかいの『君のいない朝』

タイトルとURLをコピーしました