こんにちは、もりのひつじかいです。
今日は
かなり以前に発行されていた
「詩とメルヘン」 (サンリオ出版)
1973年創刊―2003年休刊
という文芸誌(月刊)にまつわる
お話しをさせていただきます。
とても古い話しで恐縮です。
でも
あなたには
伝えておきたいのです。
お役には立たないかもしれませんが
お聞きください。
ひつじかい〈アンパンマン〉に選評をいただく
あなたは
『それいけ!アンパンマン』
というシリーズをご存知でしょうか?
作者は、やなせたかしさんです。
やなせさんはこのシリーズで
〈キャラクター絵本〉
というジャンルを確立されました。
そのやなせたかしさんと
ひつじかいとは
たったの1回だけでしたが
淡い接点があるのです。
それは
今を遡ること36年前のことです。
ひつじかいは
中学生のころから詩を書き始め
発刊10周年を迎えた
「詩とメルヘン」にも
1回だけ投稿したことがありました。
顧みれば
ひつじかいはそんな昔から
投稿を敢行していたんですね!
われながら驚きます。(笑)
で
初投稿したその詩が採用され
1983年11月号に掲載されました。
そのとき
「詩とメルヘン」を責任編集していたのが
やなせたかしさんだったというわけです。
その月々に投稿された詩やメルヘン
イラストなどの中から
やなせさんのフィーリングに合う作品が
チョイスされていました。
つまり
ひつじかいと
やなせさんとの淡い接点というのは
投稿者と選者という
それだけのことなんです。
それだけのことなんですが
あれから30年以上もたって
ひつじかいは
そのやなせたかしさんと同じ
「絵本」という土俵に上がろうと
奮闘努力を重ねているというそのことに
深い感銘をいだくのであります。
今日は
そのときの冊子を
引っ張り出してきました。
これは
ひつじかいの数少ない宝物です。
アンパンマンこと
やなせたかしさんの選評を読むと
いまさらながら
「よくぞ選ばれたもの」
と思いますね。
それでも
こうした経験があったからこそ
今でも投稿というものに臆することなく
取り組めているのだと思います。
ちなみに
やなせさんからの選評はこうでした。
うすいHの鉛筆で書いてあるこの詩は
読みにくかった。読んでみると、
なんだか童話めいた幼い詩だったが、
セットの風景のような乾いた絵に
とまっている蝉の姿がみえてきて、
それなりの哀感があった。
哀感、つまりはペーソスという部分が
やなせさんの感性に触れた
ということなんだと思います。
では
恥ずかしながら
その「幼い詩」を
お読みください。
都会の蝉
たかいたかい杉の梢に
半かけの月がのぼっている
それでも蝉はうたいます
いっしょうけんめいうたいます
でも
たかいたかい杉の梢に
のぼったはずの月は
青白い水銀灯のいたずらでした
たかいたかい杉の木は
のっぽの電柱でした
かなしいな 蝉
これはにせものの朝だ
そんなにみんみんと啼いてくれるな
(街は眠りについたところです)
たかいたかい杉の梢に
半かけの月がのぼっている
【絵本作家への道】はここから始まっていた!
やなせさんがおっしゃるとおり
「いっしょうけんめいうたいます」
だとか
「でも」
などという接続詞を安易に使っていたり
「かなしいな」
なんて直截に嘆いたりと
幼なさ!のオンパレードですね。
でも(笑)
当時のひつじかいに成り代わって
少し弁明をさせていただくと
この一見幼く見える表現は
〈尾形亀之助〉という詩人の
模倣だったように記憶しています。
ところで
この詩が掲載されて少したったころ
雑誌の編集部から
2通の手紙が転送されてきました。
驚いたことにファンレターでした。
後にも先にも
ファンレターをいただいた経験は
そのとき限りでしたが・・・。
さて
『都会の蝉』でありますが
イラストレーターの
松永禎郎(よしろう)さんが
絵を担当してくださいました。
松永さんは
ニッポン放送からフジレビに移り
その後
イラストレーターに転進された方で
「かなしいくらいに美しい」
といわれる絵を描かれたひとです。
単独で出版されたものでは
2冊の画集のほかに
『しろふくろうのマント』
(サンケイ児童出版文化賞)
という著書があります。
この『都会の蝉』のイラストは
ひつじかいの思い出の1枚ですね。
このイラストのおかげで
「幼い詩」が
どれほど大人びてみえたことでしょう。
やなせたかしさんも松永禎郎さんも
鬼籍に入られてしまいました。
たった一遍の詩
ただ一枚のイラストを通じての
淡い接点ですが
彼らとつながることができて
本当によかったと思っています。
勇気を出して投稿をして
本当によかったと思っています。
と
ひつじかいのささやかな思い出を
長々とお伝えしてきましたが
こんな話しがいくらかでも
あなたの背中をおすことにつながれば
さいわいです。
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