〈グリム童話賞に挑んだ〉ひつじかいの オリジナル童話『あ!』

ファンタジー 絵本・童話コンテスト

こんにちは、もりのひつじかいです。

このブログでも
これまでに何回かお伝えしてきましたが
ひつじかいはこれまでに
絵本のストーリーや童話のコンテストに
あわせて18回応募しています。

今日ご紹介するのも
そんな投稿作品のなかの一作です。

シマリスの子どもたちを主人公にした
短編童話ですね。

シマリス

 

 

 

 

「グリム童話賞」
というコンテストの募集に応じた際の
オリジナル原稿に
若干の手を加えたものです。


ちなみに2020年度は
主催者の都合で「一回休み」
となってしまうようですが(珍しい)
2021年度には再開するらしいので
「グリム童話賞」ファンのあなたには
朗報ですね。
 

ところで
絵本や童話の読み聞かせボランティアに
長年携わっている妻にいわせると

「この童話『あ!』の結末は
とても残念なかたちになっている」
そうです。

絵本でも童話でも
子どもを〈がっかり〉させたままで
終わってはいけないのだそうでして
落選して当然!
と手厳しい限りですね。

 

でもね・・って

ひつじかいは思うのです。

子どもの世界にだって

「不合理」なことのひとつやふたつは

あるはずだろうなって。

大人はそれを
忘れてしまっているだけなんじゃ
ないのかな・・?

だから
この童話の結末は
とても「残念なかたち」のままです。
あなたもおそらく
がっがりされることでしょう。

がっかりされるだけではなく
もしかしたら

???

となってしまうかもしれませんね。

ですから、はじめに謝っておきます。
「ごめんなさい」。

そのうえで
ひつじかいが仕掛けた「がっかり」

???

の部分を
じっくり考えていただければと思います。


では、お待たせしました
がっかりな童話の始まりはじまり~。

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『あ!』

きのうあたりから
こずえをふきぬけるかぜが
つめたくかんじられるように
なってきました。
こがらしのきせつが
もうそこまできています。

くぬぎのもりでは
そんな、さむさなんかものともせずに
しまりすのこどもたちが
げんきいっぱいあそんでいます。

「うわー、こんなところに
おおきな、こんぺいとうがおちている」

さいしょに
ひろばへかけこんだキラくんが
さけぶようにいいました。
そのめは、きらきらとかがやいています。

こんぺいとう

「あら、ほんとう。
こんなにおおきなこんぺいとう
みたことがないわ」

おひげがじまんのピンコちゃんが
じまんのおひげを
ぴんぴんとふるわせました。

「ねえ、はやくたべようよ」

まんまるおなかのマルくんは
いまにもかじりつきそうです。

「そうだ、
ほかのなかまにもしらせておかなくちゃ」

おみみがじまんのミミちゃんが
あわててはしりだそうとしました。

「まってよ、まって」

キラくんが
りょうてをひろげて、さえぎりました。

「そのまえに、これをかくしておくんだ。
しらせにいっているあいだに
たべられちゃたら、くやしいだろう?」

「それも、そうね」

ミミちゃんは
てれくさそうにわらいました。

「でも、これ、おとしものだったら
どうするの?」

ふさふさしっぽの、フサちゃんは
なんだかしんぱいそうです。

「えっ、なに、おとしもの?
これが? これが?
ねえ、フサちゃん
これはねえ
くまさんのおしりよりもおおきいんだよ。

こんなにおおきなものを
いったいだれがおとしたっていうの? 
だいいち
これがすっぽりはいるポケットなんか
ぼく、みたこともないや!」

キラくんが
しんけんなかおでいうので
フサちゃんも
ようやくあんしんしました。

「それじゃ、いいかい
これを、ころころころころころがして
あそこのくぼみにおとすよ。
そうして
うえからはっぱをかけておけば
すぐにはみつからないからね」

「よーし、やろう」

マルくんが、はずんだこえをあげました。

「せーの、いち、にい、さん!」

みんなが、いきをあわせたところで
マルくんのおなかが
「ぐー」となったものですから
おもわずちからがぬけて
どっと、わらいころげてしまいました。

きをとりなおして
もういちどおしてみましたが
こんぺいとうは
うんとも、すんともいいません。

すると、こんどは
キラくんのおなかが「ぐー」。
みんなが、くすっとわらいました。

「やい、なにがおかしいんだよ」

さっきはひとのことをわらったくせに
キラくんは
ぷくっとふくれてしまいました。

「やっぱり
みんなをよんでこようよ」

ミミちゃんがそういうと
キラくんは
ますますふきげんになるいっぽうです。

「もう、いいよ。
これをころがすのは、もうやめた。
ぼくがさいしょにみつけたんだから
ぼくがいちばんにたべるからね」

キラくんは、ひをあびて
おほしさまのようにかがやきだした
こんぺいとうに
かりっと
ちいさな、はをつきたてました。

「あいたたたたたたた!」

「だいじょうぶ?」

ミミちゃんがしんぱいそうに
キラくんのおくちをのぞきこみました。

「おもったよりもかたそうね。
おりょうりにつかうしかないかしら」

ピンこちゃんは
おひげをきゅっきゅっとしごきながら
ぶつぶつひとりごとをはじめました。

「これを、おおきなおなべで
ぐつぐつとにて・・
たっぷりクルミをいれて・・
あまいあまい
さとうがしでもつくろうかしら。
それとも……」

砂糖菓子

みんなは、うっとりとめをとじました。
すると、なんだかほんもののおかしが
めのまえにあらわれたような
そんなきもちになりました。

「もうだめ、もう、ぼく、これいじょう
たべられないよ!」

そういうとマルくんは
おおきなげっぷをひとつしました。

「マルくんたら
ほんとうにくいしんぼうなんだから。
でも、マルくんみたいにたべちゃったら
すぐになくなってしまうでしょう。
だからわたしはね、このこんぺいとうを
ふゆにそなえてしまっておくの。
そうすれば、ふぶきのよるだって
おそとにでかけなくてもすむもの」

フサちゃんにいわれて
しまりすのこどもたちがみみをすますと
あの、おそろしいうなりごえが
とおくからきこえてきました。

しかも

それが、だんだんちかづいてきます。
そんなくらいよるに
おうちでぬくぬくしていられたら
どんなにしあわせなことでしょうか。

「だけど
こんなにおおきなこんぺいとう
わたしたちのおうちに
はいりきらないわ!」

ミミちゃんのこえで
みんなは、はっとめをあけました。

ミミちゃんは、つづけて

「わたしに、めいあんがあるの。
このこんぺいとうをね
まるごとおうちにしてしまうのよ!
ええ、ええ、わかっているわ
これはとってもかたいから
もぐらさんにおねがいして
てつのシャベルをかりるのよ」

「シャベルでどうするの?」

マルくんが、もどかしそうにききました。

「はじめに、まどをひとつあけるのよ。
そこからなかへはいって
ちいさなおへやをつくるの。
そうして、そのおへやを
まいにちすこしずつたべていくのよ。
そうすれば、いつのまにか
ひろいおへやのある
りっぱなおうちができるでしょう」

ああ、それは
なんてすてきなおうちだろうと
みんなはおもいました。
たべられるおうちなんて
きいたこともありません。
そんなおうちなら
ふゆのながいよるだって
たいくつすることはないでしょう。

おかしのおうちの、おかしのへやで
みんながうとうとしていますと
それまでだまってきいていたキラくんが
とつぜんこえをはりあげました。


「ねえ、たべてばかりじゃ、つまんない! 
もっと、あそぼうよ」

「やれ、やれ
これをたべるっていいだしたのは
あなただったはずよ」

ピンこちゃんは、キラくんを
きっとにらみつけてから

「でも、なにしてあそぶの?」

と、つけくわえることを
わすれませんでした。

「いいかい、よくきいて。
このこんぺいとうに
アリさんのおうちみたいな
トンネルをほって、めいろをつくるんだ。
そうしてね
そこでおにごっこをするんだよ。
トンネルは、上にも下にも
よこにもつながっているから
おにがきたってへっちゃらさ
ぜったいにつかまらないんだ」

キラくんは、えへんとむねをはりました。

「でもね、キラくん、おにのかわりに
ヘビさんがきたらどうするの?
へびさんが『こんにちは
ぼくもなかまにいれて、にょろ』
なんていいながらはいってきちゃったら
どうしよう!」

フサちゃんは
とってもしんぱいそうです。

「うえ~ん、ヘビさん、こわいよ~」

マルくんが、ぶるぶるふるえだしました。

「わかった、わかったよ。
めいろはやめるよ・・・
そうだ、こんぺいとうのおうちの
やねのあたりに
ふといロープをとおすんだ。
そうして、そのロープを
たかいきのえだにひっかけるんだよ。
それから
ロープのはしをしたまでおろしてきて
みんなで
ちからをあわせてひっぱるのさ」

「わ~い、ひっぱればいいんだね。
そんなの、かんたんだよ」

マルくんは、ひとりではしゃいでいます。

「だけど、ひっぱると、どうなるの?」

ミミちゃんは、くびをかしげました。

「ひっぱればひっぱるほど
おうちはどんどん、のぼっていくのさ」

キラくんは、けんめいに
ロープをひっぱるまねをしました。

「そうだよ、そうだよ
のぼっていくんだよ。
わーい、キラくんが
もう、あんなに小さくなっちゃった」

マルくんは、ぜっこうちょうです。

シマリス

こんぺいとうのおうちが
きらきらとかがやきながら
ゆらゆらとこずえめがけて
のぼっていきます。

「わ~い
まるでききゅうにのっているみたい」

ピンこちゃんが、わらっています。

「ヘビさん、さようなら~」

ききゅうのまどから
フサちゃんが、てをふっています。

「もりじゅうが、みわたせるわ!」

ミミちゃんが、そうさけんだときです。

「パパ、ぼくのキラキラ
こんなところにおちていた!」

とつぜん、だれかが
みんなのききゅうを
いいえ、こんぺいとうを
ひょいっと、つまみあげたのでした。

「あ!」

「あ!」

「あ!」

「あ!」

「あー」

ぽかんと
そらをみあげるこりすたちのうえに
ことしさいしょのゆきが
ふわり、ふわわと、おちてきました。

こりすたちは、いつまでも、いつまでも

こんぺいとがきえたあたりの

しろいおそらをみあげていました。


お話しは、これでおしまいです。

 

でもね
このお話しには
まだ続きがあるんです。

「また、いっぱいあそぼうね」

と、だれかがいいました。

「うん
こんどは、ゆきのおうちをつくろうよ」

と、ほかのだれかがこたえました。

え?
だれ?
だれがおはなししているの?

あたりをみまわしてみましたが
だあれもいません。

もりのなかは
し~んとしずまりかえって
かみきれがおちているばかり。

そのかみきれには・・・

あれあれ?
しまりすのえがかいてありますよ。

もりのなかにのこされていたのは
5まいのかみのにんぎょうだったのです。

じつは
しまりすのペープサートたちが
おしゃべりをしていたのでした。

(おわり)

じつはシマリスたちは・・・

最後の最後に種明かしをしていますが
シマリスたちは
ペープサートだったんですね。
つまりは紙でできた人形というわけです。

ということで
このお話しは
小さな舞台で演じられた
「人形劇」というスタイルを模したもの
だったんです。

はじめに種明かしをしてしまうと
「がっかり」の衝撃が
半分くらいになってしまいますので
あなたには黙っていたのです。

え?

「もっとがっかりした」

あちゃー

本当にごめんなさい。

 

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