石地海岸はパンドラの匣~君のいない夏に思いを寄せて~

海岸 詩・ポエム

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

ここまで
9回にわたりお伝えしてきました
ぼくのオリジナル集『君のいない朝』。

 

まだ未掲載のものなど
十余編を残してはいますが
あと2回ほどお伝えして
区切りをつけたいと考えています。

 

ここまでの足跡は
次のリンクからご覧いただけます。

 

『君のいない朝』(その1)

『君のいない朝』(その2)

『君のいない朝』(その3)

『君のいない朝』(その4)

『君のいない朝』(その5)

『君のいない朝』(その6)

『君のいない朝』(その7)

『君のいない朝』(その8)

『君のいない朝』(その9)

 

本格的な夏が近づいてきました。

あんなに海が好きだった息子は
もうこの世にはいません。

 

思い出の海岸
新潟県石地(いしじ)海岸は
ぼくと妻にとって
今や
近づくことも開けることもできない
パンドラの匣となってしまいました。

 

いつか
この匣を開ける日はくるのでしょうか。
おだやかなこころで
海に沈む夕日を見つめられる日が
ふたたび訪れるのでしょうか。

 

そんな日は必ずくるものと
ぼくはかたく信じています。

 

信じてはいますが
それは今日ということではなく
明日ということでもないことを
うすうす感じてはいるのです。

 

でもこの函は
ぼくらがなんとかやっていて
もう大丈夫だということを
息子に伝えるために
いつか開けなければならないものだと
そう思っています。




ツリー 石地海岸

 

石地海岸にいけたらいいな

 

君はここにはいないから

ぼくとつまと

 

ふたりで

 

あそこで

いくつもの夏をすごしたね

海辺(かいへん)をどこまでもあるいたね

きれいなチャートをあつめたね

砂にまみれてあそんだね

 

海岸

 

石地海岸はパンドラの函

いまは開けてはならない

パンドラの函

函を開けてしまったならば

きっと

ぼくらは

窒息する

 

 

それでもいつか

石地海岸にいけたらいいな

 

君はここにはいないから

君の思い出をたずさえて

 

あのころのようにわらったり

あのころのようにうたったり

あのころのようにおしゃべりしながら

海までドライブ

のんすとっぷで

 

 

みんなで石地海岸にいけたらいいな

 

君はここにはいないけど

ぼくらのなかには

君がいる

 

パンドラの函を開けたいな

 

いつかきっと

あの海で

 

 

三つ葉が四つ葉になる確率は1万分の1

ふと気づくと
四つ葉のクローバーを探している
自分がいます。

 

クローバー

 

リリカルな理由からではありません。

 

息子に捧げるために
探しているのです。

 

それにしてもおかしなものだと
われながら感じています。
亡くなった人間に
いまさらクローバーを贈ったところで
いったいなんの役に立つと
いうのでしょうか?

 

体の良い自己陶酔?
逃避?逃走?自己撞着?

 

それでもぼくは
執拗に探し続けます。
1万分の1の幸運を
なんとか息子に届けようと・・・

 

 

ツリー ラッキー・クローバーを探して

 

ラッキー・クローバーを探して

白詰草の草原に膝をつく

三つ葉が四つ葉になる確率は1万分の1

 

フォーリーフ

四つ葉のクローバー

真実の愛

 

1万分の1の幸運を君に贈りたくて

草原に膝をつく

 

 

いまさら幸運とはなんという齟齬

惑乱

混乱

行き違い

君の困惑した顔が目にうかぶ

 

ならば

真実の愛へ至るための割賦とでも

言い直そうか

あるいは切符

ポップ

アップ

 

三つ葉が四つ葉になる確率は1万分の1

リーフが4枚そろって

はじめて愛は完結する

君への愛が完結する

未完に終わった愛が・・

完結する

 

ラッキー・クローバー

真実の愛

割賦

切符

ポップ

アップ

 

誰に何を言われようとも

1万分の1の幸運を見出したくて

三つ葉から四つ葉への飛翔を

見届けたくて

草原に膝をつく

膝をつく

四葉

じりじりと背中が燃える

卵黄のような夕日が山の端に溶けていく

祈りのように溶けていく

 

 

揺れることでバランスを取って

息子の死から
早や5か月が経過しようというのに
妻にもぼくにも
哀しみが間歇的やってくのでした。

 

ぼくらは木でできたおもちゃのように
大きくゆれたり
小刻みにゆれたりしながら
哀しみをやり過ごすのでした。

 

メトロノーム

 

こうやって少しずつ
バランスを取る方法を学んでいるのです。
哀しみという名のエナジーで
自らを破壊することがないよう
大きくゆれたり
小さくゆれたりしながら
エナジーを宇宙に解き放つのでした。

 

 

ツリー 弥次郎兵衛

 

弥次郎兵衛がゆれている

つまがゆれている

君の追憶がやってきたのだ

 

ぼくもいっしょにゆれている

弥次郎兵衛がゆれている

 

こうやってゆれながら

ぼくらはバランスをとっている

君との距離をはかっている

哀しみというパートナーと

無言でワルツを踊っている

 

弥次郎兵衛がゆれている

つまがゆれている

ぼくがゆれている

 

烈しくゆれたり

幽かにゆれたり

ほとんど止まって見えたりしながらも

ぼくらは涙をかわかす術を学んでいる

哀しみのなすがままにさせている

 

つまとぼく

弥次郎兵衛と弥次郎兵衛

メトロノームのようにゆれながら

たがいの意思をつたえあう

哀しみをつたえあう

こころとこころで共鳴しあう

 

 

君の追憶がやってきた

となりでつまがゆれはじめる

ぼくもソロリとあとを追う

こんどのゆれはかなり大きくなりそうだ

 

オーロラ

 

つまとぼく

弥次郎兵衛がゆれている

 

 

オリジナル詩集『君のいない朝』の関連記事を以下にまとめています。

息子を亡くしたひつじかいの慟哭をポエム集にまとめました。①】
📑ポエム&エッセイで紡ぐ息子へのオードひつじかいの『君のいない朝』

【哀しみと対峙するひつじかいの心の軌跡をお読みください。②】
📑ひつじかいのポエム&エッセイ『君のいない朝』をあなたへ

【もぬけの殻になってもエンピツを握る力だけは残っていました。③】
📑〈自死した息子に贈る〉ポエム&エッセイ『君のいない朝』から

本当の哀しみは遅れてやってくるのだということを知りました。④】
📑〈家族の死を深く見つめて〉ひつじかいの詩集『君のいない朝から』

【子どもに先立たれるという不条理を言葉に置き換えて。⑤】
📑〈子どもに先立たれるということ〉ポエム集『君のいない朝』から

【ポエムはある種の傘あるいはシェルターだったのかもしれません。⑥】
📑「書くことで心の平衡を保って」ポエム集『君のいない朝』から

「今この瞬間しかない」ということを息子から教えられました。⑦】
📑亡き息子へ!ひつじかいのポエム集から「君が教えてくれたこと」

花びらは散っても花は散らないという言葉をシェアします。⑧】
📑自作ポエム集『君のいない朝』から「みどりに想う」ほかをシェア

【山霧にそして蝉しぐれのなかに息子は偏在している。⑨】
📑息子が幻視した怖れ(コビット19)は現代版ハルマゲドンか?

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