息子はいない、けれど偏在している?詩集『君のいない朝』から

山霧の中にも偏在する息子 詩集『君のいない朝』
山霧に息子が・・

こんにちは、もりのひつじかいです。

 

コビット19(新型コロナウイルス)の
感染拡大が止まりません。
先進主要国の首脳たちは
このウイルスとの闘いについて
「これは戦争だ」と語っています。

 

コビット19への対応については
敵意よりも愛が有効と考えるひつじかいは
戦争という言い回しに
賛同はでき兼ねますが
百歩譲って
もしもこれが戦争であるとするならば
ヨハネの黙示録にいうところの
ハルマゲドン(最終戦争)
ということになるのでしょうか?

 

さて
一昨年24歳で自死した息子は
亡くなる1年ほど前から
ばい菌とかウイルスを
極度に怖れるようになっていました。

 

もしかしたら息子には
今日のこのパンデミックが
〈視えて〉いたのかもしれないなと
ぼくは
なかば強引に息子とコビット19を
結びつけてみたりしています。

 

なんだか
ロボットみたいな名前をつけられた
新型コロナウイルス
コビット19。

 

息子が生きていたならば
この不意の「来客」について
いったいどんなコメントを
発したでしょうか?

 

あるいはさらなる怖れから
より一層心を閉ざしてしまうことに
なったのでしょうか?

 

息子はいない、けれど息子は偏在している?

これまでシリーズでお伝えしてきました
オリジナル詩集『君のいない朝』。

 

未来を幻視できないぼくは
息子がここにはいない
という眼の前の現実(怖れ)から
目を背けることができません。

 

息子の息吹を探し求めて
ソウル・ジュエリーをつくり
ハナミヅキに落ちる雨滴を見つめ
山霧に目をこらし
松蝉の鳴き声に耳を澄ますのでした。

 

 

息子はここにはいないが

しかし偏在はしているという

アンビバレンツな感覚に

不思議と

安らぎを見出したりもするのでした。



息子が亡くなったあとの
ぼくのこころの軌跡を
次のとおりまとめています。
よろしかったらお好きなところから
読み進めてみてください。

 

『君のいない朝』(その1)

『君のいない朝』(その2)

『君のいない朝』(その3)

『君のいない朝』(その4)

『君のいない朝』(その5)

『君のいない朝』(その6)

『君のいない朝』(その7)

『君のいない朝』(その8)

 

本日お伝えする詩は

「クロスの中の息子」
「ハナミズキⅠ」
「ハナミズキⅡ」
「山霧」
「あおい扉のむこうで」

の5編です。
あなたの感想などをお聞かせいただければ
さいわいです。

 

 

ツリー クロスの中の息子

 

ソウル・ジュエリーとよぶらしい

 

スタッドクロス型のペンダントの中に

息子の遺骨を収めた

 

これで

いつでもあの子といられる

つまのつぶやきが胸に響く

 

遺骨といったって

小さなペンダントのことだから

骨片はピンセットでつまむことになる

 

 

受精卵から

なんとも精妙なプロセスを経て

間葉系幹細胞がつくられ

それが前骨芽細胞へと分化し

つぎに骨芽細胞へと分化し

胞衣(えな)のなかで祝福をうけながら

君の骨組織はつくられたのだ

 

 

その神妙な骨組織を

君は大胆にも手放したが

あきらめきれないぼくらは

そいつの成れの果てを

クロスの中に収めることにしたのだった

 

不思議なことに

骨片を身近におくことで

骨片のことは忘れることができる

骨組織生成のプロセスを

しばし忘れることができる

 

クロスに収めきれないお骨は-

 

といっても

ほとんどの骨

ということになるのだが・・・

 

お墓に運び

納骨棺(カロート)の中にそっと落とした

焼けて乾いた骨組織を

そっと落とした

歯磨きが嫌いだった君の

歯根を支えていた金属製のブリッジが

最後に落ちていった

古いお骨に中に

カサット音立てて落ちていった

 

骨粉がかすかに舞い上がった

窓に息で書いたクロス

 

クロスの中には

きょうもぼくらの息子がいる

 



ツリー ハナミヅキⅠ

 

雨が降っている

音もなく

雨が降っている

わたくしのこころに

 

雨は

わたくしの窓辺をしめらせ

わたくしの小部屋をしめらせ

たましいに落滴する

 

雨が降っている

ハナミヅキが揺れている

 

この雨はいつ降りやむのか

わたくしはしらない

この雨はいつ降りやむのか

誰もしらない

 

雨が降っている

ハナミヅキが揺れている

わたくしの想いが

揺れている

 

 

ツリー ハナミヅキⅡ

 

五月の靑空が

ひろがっているなにももたずに

どこまでも歩いていけそうなそんな

靑空がひろがっている一昨日から

降りつづいた雨はきゅうそくに

かわきはじめているハナミヅキ

がゆれている

ハナミヅキ

雨はあがったがまだ

雨は降っているわたくしの

こころに降っているとうめいな

雨滴がぽたりぽたりと落ちてくる軒端が

しっぽり濡れている

 

わたくしはひとり部屋にいて雨

音を聴いているこころの

音を聴いているこの

雨はいつあがるのだろうかとぼんやり

かんがえている

 

一昨日から

降りつづいた雨はきゅうそくに

かわきはじめているハナミヅキが

ゆれているゆれて

いるハナミヅキがゆれ

ているゆれ

ている

 



ツリー 山霧

 

スローモーションで流れていく

山霧

無言の浸潤

 

雲か

霞か

 

移ろい

掠め

潤い

留まり

膨らみ

霧散す

 

山あいに

夜明けの徴(しるし)が届く

にわかに光の粒を撒き散らす

山霧

 

大胆に

かつ小心に

ぬかりなく

それでいて無防備に

 

スローモーションで流れていく

山霧

無言の浸潤

 

そこに偏在するのは息子なのだと

ぼくは想う

何の脈絡も伝手(つて)もなく

そこに偏在するのは息子なのだと

ただぼくは想う

山霧とは

息子の魂魄の謂(いい)なのだと

ぼくは想う

 

陽は昇り

じりじりと山肌は熱を帯び

山霧は雲に溶ける

 

ああ

息子が溶ける

雲に溶ける

雲に息子が溶ける

息子が

息子が雲に溶ける

 

山霧は拡散し

希釈され

突然-

 

消えた

 



ツリー あおい扉のむこうで

 

とおくちかくに松蝉のこえ

松蝉のこえ

 

うまれたばかりの夏の

あおい扉のむこうで

うまれたばかりのおまえが

ないている

ないている

ふるえている

寄せては返し返しては寄せる

遥かなる

潮騒のように

 

たかい梢からおちてくる

蝉しぐれ

蝉しぐれ

こずえ

わたくしはひとり

あたまのなかをからっぽにして

潮騒に耳をすます

心の窓をあける

海を見る

 

とおくちかくに松蝉のこえ

松蝉のこえ

 

あおい扉のむこうで

うまれたばかりのおまえが

ないている

ないている

ふるえている

 

うまれたばかりのおまえを

さがして

さがして

わたくしはひとり

潮騒の只中へと降りていく

降りていく

 

たかい梢からおちてくる

 

 蝉しぐれ

   蝉しぐれ

     蝉しぐれ

 

 

※あわせてこちらもお読みください。 
↓↓↓

息子を亡くしたひつじかいの慟哭をポエム集にまとめました。①】
📑ポエム&エッセイで紡ぐ息子へのオードひつじかいの『君のいない朝』

【哀しみと対峙するひつじかいの心の軌跡をお読みください。②】
📑ひつじかいのポエム&エッセイ『君のいない朝』をあなたへ

【もぬけの殻になってもエンピツを握る力だけは残っていました。③】
📑〈自死した息子に贈る〉ポエム&エッセイ『君のいない朝』から

本当の哀しみは遅れてやってくるのだということを知りました。④】
📑〈家族の死を深く見つめて〉ひつじかいの詩集『君のいない朝から』

【子どもに先立たれるという不条理を言葉に置き換えて。⑤】
📑〈子どもに先立たれるということ〉ポエム集『君のいない朝』から

【ポエムはある種の傘あるいはシェルターだったのかもしれません。⑥】
📑「書くことで心の平衡を保って」ポエム集『君のいない朝』から

「今この瞬間しかない」ということを息子から教えられました。⑦】
📑亡き息子へ!ひつじかいのポエム集から「君が教えてくれたこと」

花びらは散っても花は散らないという言葉をシェアします。⑧】
📑自作ポエム集『君のいない朝』から「みどりに想う」ほかをシェア

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