こんにちは、もりのひつじかいです。
今日は
〈原稿を寝かせる〉ことの効能について
考えてみたいと思います。
絵本づくりに限らず
作文などでも
「一晩寝かせてから見直しほうがよい」
と指導している講師がいますよね。
たしかに
〈原稿を寝かせる〉ことで
その文章の「アラ」が
見えてくることがあります。
作文もしかりでしょう。
でも、絵本や童話などの
いわゆる「文芸もの」の場合は
そこにもう一つ
別の「効能」が加わるのではないかと
ひつじかいは考えています。
それは何かということなんですけど
もしかしたら
少しだけスピリチュアルなお話しに
なるかもしれません。
スピリチュアルといっても
いわゆる「都市伝説」
みたいなお話しではありませんので
このままお読みいただいても
損はないかな~と思いますよ。
そもそも〈寝かせる〉って何だろう?
よくお料理のレシピなどでは
「冷蔵庫で◯時間寝かせて」
みたいな表現がされていますよね。
ワインもウイスキーも泡盛も
10年よりは17年
17年よりは30年寝かせたもののほうが
珍重されます。
あれ?
さすがにワインの30年は
寝かせ過ぎでしょうか?
ワインについては詳しくないので
思わず馬脚を現してしまいましたね。
ほかには
そうですね・・
昔実家では味噌を仕込んでいましたが
1年近く樽で寝かせていましたね。
確かに、ハムもチーズも押し寿司も
みんな寝かされています。
なんだか食べ物の話しばかりです。
では変わったところで・・・
かつてある詩人が
「本を買ってもすぐには読まない」
という話しをされていました。
しばらく積んでおくのだそうです。
それも読書の一種なんだそうです。
「つんどく」という
読書なのだということです。(笑)
なんだかギャグみたいなお話しですが
「つんどく」には
それなりの効能があって
積んである本をつらつら眺めながら
装丁からはじまり
作者や中身やらをつらつら想像する
「愉しみ」があるのだそうです。
そうやって本の周りをうろつきながら
さあ、読むぞ!というタイミングを
図っているのだとか。
時が満ち、いつかその時がやってきたら
おもむろに手を伸ばす。
けれども
もしかしたらその時に至ることなく
鬼籍に入ってしまうことだって
あるかもしれません。
それはそれで、よいのだとか。
なぜなら
「つんどく」は完結しているから
だそうです。
あ
そうだ
他にも思い出しましたよ。
無垢材で建てる家は
ひと冬おき(寝かせ)ますよね。
考えてみますと
〈寝かされて〉いるものって
案外多いことに気がつきますね。
これらに共通するキーワードは
「熟成」ということでしょうか。
時間という「手間」をかけることで
エッセンスを【濃縮】しているわけです。
つまりは急がば廻れ!
絵本づくりもこれと一緒ですね。
〈原稿を寝かせる〉ことの真意とは?
さて、ここからがいよいよ本題です。
ひつじかいが知りたいのは
(もちろんあなただって!)
パン生地のことでもなく
スカッチウイスキーのことでもなく
雪印チーズでもマルコメ味噌でもない
いわゆる文芸ものと呼ばれる
「作品」について
なぜ原稿を寝かせればいいのか?
ということですよね。
『かいじゅうたちのいるところ』
というベストセラーを著した
モーリス・センダックという絵本作家は
この物語の原稿を
じつに5年間も寝かせておいたそうです。
絵本づくりというものが
気の長~い作業の連続であることを
日々思い知らされているひつじかい
ではありますが
それにしても
5年間という時間はあまりにも長大です。
こんなに長いあいだ
原稿を寝かせておいたら
それこそ
「塩漬け」になってしまうのではないかと
心配にすらなりますね。
でも
現に
その絵本は
世界で1000万部を超える
ベストセラーになっているわけですから
ひつじかいの心配などは
ただの杞憂ということです。
つい最近も
「構想10年」という小説が
発表されたりしていますので・・。
じゃあ
この5年とか10年というあいだずっと
寝かされていた原稿に
いったい何が起きていたのでしょうか?
まさか「発酵」していたわけでは
ありませんよね?
ところが
そのまさかが起きているのではないかと
ひつじかいは考えています。
原稿=物語ですから
「発酵」というよりは
「展開」というべきかもしれませんが
その物語が
「原稿の中で展開していた」
ということです。
いやいや
こういう言い方も正確ではありません。
いいですか、よく聞いてください。
原稿化された
あるいは構想された
その「想像的世界」の中で
物語がごく自然に展開していた。
ということです。
別の言い方をすると
基本となるテーマを想像し
舞台や時代背景を想像し
登場人物を想像し
プロットを想像しさえすれば
あとは勝手に物語が展開していく。
創造されていく。
ということです。
プロットについては
本当に大雑把でいいのかもしれません。
むしろそのほうが
ダイナミックに
物語が動き出すのかもしれません。
非物質的に創造された世界ではありますが
極めてリアルな物語が創造されていく
ということなんですね。
こんなことをぬけぬけと書くと
あなたでなくとも
「まさか!」
と言いたくなりますよね。
想像したことが
創造されるなんて
この現実世界では
有り得ませんからね。
しかし
こうしたことは昔から
創作に関わるひとたちには
何度も起きていたのではないかと
ひつじかいは考えています。
これが
〈原稿を寝かせる〉ことの
真意ではないかと思うのです。
この秘密に気がついたひとは
その後の「展開」を
ただ「書き留めるだけ」で
いいのです。
頭で捻り出したお話しではないので
進行がとても自然で
予想もできない展開へと
導かれていきます。
日本の古典から引いてみると
『竹取物語』や
『浦島太郎』の物語などは
こうした「想像=創造」もの
ではないかと思います。
西洋でも
『ガリバー旅行記』や
『海底2万里』
それから
ロシアのドストエフスキーという作家の
『悪霊』
『白痴』
『カラマーゾフの兄弟』
などが挙げられるでしょう。
近年の映画界を席巻した
『ハリー・ポッター』シリーズなども
こうした流れに連なる作品ではないかと
ひつじかいは思っています。
ひつじかい、只今絵本の原稿寝かせ中!
ということで
かくいうひつじかいも
絵本のストーリーを寝かせています。
物語を自然発酵させて
「熟成」するのを待っているわけです。
ときどきパラパラと
絵本作りのインスピレーションが
降りてきますので、それを書き留めたり
新たなアイデアを投げ入れたりも
しますが
本格的に「樽」から出すのは
もう少し先にしようと決めています。
さて
どんなぬか漬けが
いやいや
作品(原稿)ができあがるのか
今からとても楽しみです。
あなたも
あなたの作品(原稿)を
ちょっとだけ寝かせてみてください。
ただし
樽漬けの場合は
くれぐれも天然素材の「樽」を
お選びくださいね。(笑)
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