こんにちは、もりのひつじかいです。
今日は
ひとつの物語をレビューしながら
絵本の「読み聞かせ」は
いつから(何歳から)始めればいいのか?
ということについて
考えてみたいと思います。
使用するテキストは
『それは、あらしの夜だった』
(ジャネット&アラン・アルバーグ作
/佐野洋子訳/文化出版局・1994年)
です。
※古本在庫あり
これは
かなり読みごたえのある絵本です。
文字の多さという点からいえば
絵本の〈はんちゅうを〉
はるかに超えていると思います。
しかし
この一見難しそうに見える絵本でも
子どもは大人が考えるほどには
難しいと感じていません。
それはなぜなのか・・?
この絵本を
息子に読み聞かせしたときの体験から
ひつじかいが理解したことをふまえ
お伝えしてみたいと思います。
少し長くなりますので
先を急がれる方は
次のレビューセクションを
飛ばしていただいても構いません。
それは〈つくり話し〉の夜だった?
お話しの舞台は・・
登場人物たちの名前(レオナルド&
ジョルジョ&ファブリッツetc)
などから推して
たぶんイタリアかな?
でも
海があって山があってオオカミもいて
ということになると
イタリアではないかもしれません。
とにかく
8歳の男の子が
山賊の一味にさらわれたところから
物語が始まります。
夜。
外はどしゃぶりの嵐。
山賊の一味はアジトとする山奥の
「ひみつのかくれが」で
もんもんとくすぶっています。
というのもこの嵐では
仕事にくり出すことが
できないからです。
そこで一味の親分が男の子に
たいくつで死にそうだぜ!!
何か話しをしろ!!
と命じることになります。
男の子は最初は
「話なんか知らないもん」
とつっぱねますが
「なら、つくれよ」
とせきたてられて
いきあたりばったり
口からでまかせのお話しを
ぽつぽつと語り始めるという流れ。
先に結論を言ってしまうと
男の子のこの「つくり話し」が
結果的には
彼の命を救うことになるのでした。
複雑な物語でも子どもは〈感性〉で聞いている
山賊の一味は親分を入れて7人。
そこに主役の男の子が加わって
都合8人の台詞が
物語の全般にわたり
飛び交うことになります。
〈読み聞かせ〉に際しては
「朗読などのように声色は使わない」
と説くグループもありますが-
なにしろこれだけの人数の台詞が
入り乱れてますし
特に親分の台詞なんかには
どうしても力が入ってしまいます。
また物語も
男の子の〈つくり話し〉に
山賊一味が反応し連想をふくらませ
プロットが次から次へと
組み替えられていく展開となりますので
読み進めている方もしまいには
「どれが誰の台詞だか分からなく」
なってくる始末。
それでも
心配は「不要」だったんですね。
息子は〈感性〉でこの物語を
聞き取っていたのだと思います。
この絵本を初めて読み聞かせたときに
彼はまだ3つにもなって
いなかったのではないでしょうか。
翻訳は
あの『100万回生きたねこ』で知られる
佐野洋子さんですから
親分の台詞まわしなど
じつに豪快な作品ではあるのですが
読み聞かせをしていて
うまく「口が回らない」ところが
いくつかあるのも確かです。
しかし
そんな難所もどうにかこうにか乗り越え
物語は大団円へとなだれ落ちていきます。
〈つくり話し〉の想像力に興奮し混乱し
仲間割れをおこした山賊たちが
ほうほうの体で逃げ出してゆくのです。
無事に家に帰って
ココアとロールパンとゆでたまごと
ホットチーズサンドと採れたての桃2個を
ペロリと平らげ
さらにもう一杯のココアをおかわりして
ようやく人心地がついた男の子に
妹たちがせがみます。
ねえ「山賊の話しをして!」
そこで男の子は唇をひとなめしてから
おもむろに語り始めるのでした。
「それは、あらしの夜だった・・」
絵本の読み聞かせはいつからすればよいのか?
端的に言ってしまえば
0才児に読み聞かせをしてもよいのか?
ということだろうと思います。
専門家の意見を聞いてとか
医学的見地からとか
いろいろあろうかと思いますが
胸に手を当てて
思い出してみてください。
あなたは赤ちゃんが産まれる前から
ということは
赤ちゃんがおなかに宿ったときから
すでに読み聞かせをしてきたのでは
なかったでしょうか?
いわゆる
〈胎教〉の一環としての読み聞かせです。
おなかの赤ちゃんはそのとき
あなたの読み聞かせに
機敏に反応していたはずですよね。
ひつじかいの娘は
ママのおなかにいたときに
「おひなさま」のお話しが大好きでした。
たしか・・
おひなさまたちが
のねずみこども会のリクエストに応えて
森のひな祭りに出かけて行くという
そんなお話しだったかと思います。
後で確認しましたら
『もりのひなまつり』
こいでやすこ・さく/福音館書店
1997年特製版
という絵本でした。
このお話しを読んであげると
おなかのなかの娘は
足をばたばたさせて
「もっともっと」とせがんだものです。
少し乱暴な言い方になってしまうかも
しれませんが
絵本の読み聞かせについては
あなたが読み聞かせたいなと思うときに
始めればいいのではないかと思います。
お子さんが「のって」くれば
そのまま続けますし
関心が向かないようだったら
無理に続ける必要はありません。
子どもは好奇心が旺盛ですから
ときがくればかならず
おはなしに「のって」きます。
ただし
短時間でもよいので
「声に出して読む」という環境だけは
日常的につくってあげましょうね。
そういう環境がなければ
「のって」くる時期も
どんどん向こうへ行ってしまいますから。
あまり神経質にならずに
こんなふうに
小さな読み聞かせを続けていけば
長い長~い絵本でも
最後まで聞いてくれるようになります。
むしろ
リクエストされるようになります。
物語性のある絵本を選ぶことも大事!
『くれよんのくろくん』
シリーズで知られる
絵本作家の「なかやみね」さんが
あるサイトのインタビューに答えて
最近のお母さん方は
それほど文字の多くない絵本でも
途中で息切れしてしまうらしい。
と心配されていらっしゃいました。
「できれば字数の少ない絵本がいい」
ということで
物語性の強い絵本を敬遠する傾向が
高まっているとも・・。
なかやさんは
「絵本に物語は不可欠」
と考える作家ですので
こうした傾向にかなりの危機感を
抱いているのだそうです。
あなたが
あなたの大切なお子さんを、将来
「本好き」にしたいのであれば
彼女の意見も参考にされて
たまには物語性のある絵本も
選んであげて欲しいと思います。
それは、あらしの夜だった。
どしゃぶりの山の奥に
山賊とオオカミがいた。
山賊の親分がアントニオにいった。
「たいくつで死にそうだぜ!!
なにか話しをしろ!!」
(『それは、あらしの夜だった』
冒頭部分から抜粋)
なんて破格な絵本に
無理して挑戦する必要はありませんが
あなたの大切なお子さんのために
おやすみなさいの前の絵本タイム
どうぞお忘れなく。
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