こんにちは、もりのひつじかいです。
世の中には「絵本の宿題」
なるものがあるということを
最近知りまして
「やるね!」って思いましたよ。
どのような学校が
どのような観点から
この「絵本の宿題」を出されているのか
そういうこまかなことは分かりませんが
絵本の創作を宿題にするという
その発想に
感動すら覚えてしまいます。
でも
昔から
こういうのってあったんでしょうかね。
そういうあなたは、ご存じでしたか?
「絵本の宿題」は大胆にやってみよう!
絵本作家を志しているとはいいましても
ひつじかいは「お話し」専門ですので
絵本の「絵」については
詳しいアドバイスはできません。
そこで
絵本の書き方・お話し編について
参照いただけそうなポイントを
整理してお伝えしてみたいと思います。
と
その前に
言っておきたいことがあります。
それは
「大胆にやろう!」
ということです。
最初から細かいことにこだわり過ぎると
絵本なんて、描けません・・・。
「とりあえず形をあたえてみよう」
というような気軽な気持ちで
絵本づくりを楽しんじゃいましょう。
こんな貴重な宿題
そんなに何回もありませんので
あくまでも「楽しく!」が
絵本の書き方を学ぶツボですからね。
ではさっそく
ひつじかい流の「絵本の書き方講座」を
はじめたいと思います。
一目でわかるように
かみくだいて流れを書いていきますね。
この流れ(フロー)にそって
進めていってもらえば
いろいろなお話しがスラスラ書ける(?)
のではないかと思いますよ。(笑)
実際の流れ(フロー)はこちら!
1 お話しのターゲットを決める
まず初めにやらなければいけないのが
あなたが作ろうとしている絵本の
対象(ターゲット)を決める
ということです。
どんな相手に向かってお話しを書くのか
あらかじめ
設定しておかなければなりません。
それによって
絵本の中身が大きく変わってきますので
とても大切な部分です。
宿題を課せられたときに
対象が決まっていることもありますが
ふつうは
次の3つから選ぶことになります。
□乳児(0~1才児)向け
□幼児Aグレード(2~3才児)向け
□幼児Bグレード(4~5才児)向け
乳児向けの絵本というのは
いわゆる
「リズム絵本」と呼ばれるジャンルが
主流になってきますので
専門的な知識が必要だといわれています。
そこで
幼児のAまたはBグレードを
おすすめしたいと思います。
Bグレードを選択した場合は
「物語(ストーリー)を紡ぐ」という点に
特に留意して欲しいと思います。
2 お話しのテーマを決める
お話しのターゲットが決まったら
そのターゲットに向かって
どんなお話しをするのか
絵本のテーマをチョイスします。
テーマは
その気になれば
いくらでも見つかりそうですが
とりあえずここでは
『子どもと読みたい!新しい絵本1000』
(NPO読書サポート発行/2009)
を参照させていただいて
次の8つのテーマをお示ししておきます。
□家族
(お父さん・お母さん・兄弟・赤ちゃん他)
□心・からだ
(気持ち・友だち・夢・願い・いのち他)
□季節・自然
(四季・雨・実り・海・宇宙・星・環境他)
□動物
(ペット・水辺の動物・鳥・恐竜・昆虫他)
□暮らし
(ごはん・仕事・家・電車・遊び・本他)
□特別な日
(クリスマス・誕生日・出会い・別れ他)
□おはなしの世界
(ファンタジー・旅・冒険・おばけ他)
□ことば・うた
(うた絵本・数・ことば遊び・なぞなぞ他)
これはあくまでも目安ですから
あなたのお気に入りのテーマがあれば
それを優先してくださいね。
なお
テーマの見つけ方に関しまして
ひつじかいは
こんなアプローチも試みています。
3 お話しの構造〈世界観〉を決める
ターゲットとテーマが決まったら
テーマを首尾よく伝えるために
お話しの構造
難しい言葉でいうと〈世界観〉を
選定していきます。
選択肢は次の2つです。
□「横に展開する」
□「縦に展開する」
「横に展開する」というのは
様々なエピソードを横に並べる
ということです。
特にこれといった物語(ドラマ)は
展開しません。
起承転結というものがありませんので
お話しは深まっていきません。
深まってはいきませんが
「あっと」驚くようなエピソードを
並べることができれば
「あっと」驚くような絵本になります。
こちらを選択した場合は
次のようなパターンが考えられます。
□同一のメッセージを
シチュエーションを変えて繰り返す
□同一のシチュエーションから
異質なものを探させる
□奇抜なものをお互いに見せ合い
その斬新さ(驚き)を競い合う
□同じモチーフの異なる側面を並べる
ひつじかいの作品で例えるならば
この3つ目のパターンに
該当するかなと思います。
このブログでは
絵本の書き方を実践的に伝えるために
関連する記事に
いくつかリンクを貼っていますが
深く知りたい場合はそちらに飛んで
イメージをつかんでくださいね。
たとえば
子どもたちに何かを教える(しつけなど)
の「教育絵本」とか「知育絵本」
あるいは「ナンセンス絵本」などは
こうした「横に展開する」パターンを
多用していますよね。
あなたが
ご自分の「絵力(えじから)」
に自信がある場合は
こちらを選択しても面白いでしょう。
「縦に展開する」と決めた場合は
次の項目についても設定していきます。
□物語の背景(意図・ねらい)
□舞台(ロケーション)
□登場人物(キャラクター)
□主要な出来事(エピソード)
□ラフなプロット(起承転結)
「物語を深く掘り下げて」いく
わけですから
こうした組み立ては不可欠です。
ただし
前のところでも書きましたが
あまり真剣に考え過ぎると
筆が止まってしまいますので
ザクザクと大胆に決めていきましょうね。
4 お話しのボリュームを決める
お話しのターゲット、テーマ
そうして構造(世界)が決まったところで
いよいよ
「絵本の仕様」に入っていきます。
お話しのボリュームをどうするか
つまり
何ページの絵本にするのか
ここで決めていくわけです。
これも対象(ターゲット)と同様
宿題が課せられたときに
あらかじめ指示されていたなら
もちろんそれに従わなければいけません。
ただし、ふつうは
次の3つから選べばよいでしょう。
□見開き7カット(14ページ)
□見開き11カット(22ページ)
□見開き15カット(30ページ)
絵本は
見開きをひとつの単位(カット)
と考える慣習がありますので
いまお示ししたパターンが
中心になります。
ただ
実際はここに
表紙&裏表紙が入りますので
実質的な総ページ数は
それぞれ2ページを加えて
16ページ、24ページ、32ページ
となります。
でも・・・
あくまで宿題の絵本ですからね
特に製本ということを
想定しているわけでもありませんので
もっと自由でもいいのかなとは思います。
でもね
市販の絵本は
皆この仕様で出回っていますので
リアリティを追求するのであれば
見開き11か15カットを採用しましょう。
5 お話しのプロットを練り上げる
「縦に展開する」を選択した場合は
大雑把に組み立てたラフプロットを
ブラッシュアップしていきます。
ここはちょっと苦手だなというひとは
次のヒントを参考にしてくださいね。
□主人公を人間以外のもの
(※動物・昆虫・ぬいぐるみなど)に
置き換えてみる
□舞台を外国に設定してみる
□舞台を過去とか未来に設定してみる
□アイデアを古典に求めてみる
(神話・伝説・民話・童話・小説など)
□古典を現代社会に焼き直してみる
□実際にあった出来事やドラマを
動物の世界に置き換えてみる
□世界の出来事(戦争・災害など)を
子どもの目線で観察してみる
※動物を主人公に据えると
様々なメリットがありますね。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
絵本は
基本的に「何でもあり」の世界ですから
あなたの発想を大いに広げてみましょう。
6 ストーリーを書き上げる
5番まで決まったら
あとは一気にストーリーを書き上げます。
はじめはお話しの長さとか
カットなどにこだわらずに
自由に楽しみながら書いてみましょう。
たとえば
次のようなことが気になっても
くよくよすることはありません。
*途中で辻褄が合わなくなっちゃった!
*会話が弾まない!
*平板でメリハリがないみたい!
*どうも冗長過ぎる!
*どうも短絡過ぎる!
*作文みたいになっちゃった!
*絵本らしくない!
*お話しが荒唐無稽だ!
とにかく
「書き切る」ということが大切です。
いったん書き上げてしまえば
あとはいくらでも調整ができますからね。
また
宿題だからといって
へんに保守的になってはいけません。
想像力を使って想像してみましょう。
それでも、うまく書けません!
というあなたには
公開中の
オリジナルストーリーをご紹介しますので
これらのお話しを下敷きにして
アレンジいただいてもOKですよ。
『はっけよい、おこった!』
『やまかじとんとん』
『あひるさんがとおりま~ス』リライト版
『あひるさんがとおりま~す』書直し版
『おつきみくださ~い』完成版
『もりのしょうぼうだん』絵本オリジナル
7 書き上げたストーリーを分割する
書き上げたストーリーを
選択したボリュームに合わせて
均等に分割します。
見開き11カットを選んだ場合は11等分
同じく15カットの場合は15等分します。
ここからは
いわゆる「編集」段階に入ります。
11ないし15に分割した
それぞれのカットが
ストーリー全体の中で
ほぼ均等に役割を担えるよう
カット間のトレード(体の良い継ぎはぎ)
を行い
内容を整えます。
ここでチエックしていただきたいのは
次の3点です。
□説明口調になっていないかな?
□1カット0~5センテンス
150文字以内に収まっているかな?
□自分で音読してみて
読みづらいところはないかな?
絵本の文章というのは
「説明文」ではありません。
絵本は「文芸」というカテゴリーの
書物ですから
ビジネス書のように
逐一解説する必要はないのです。
また最終的には
絵(イラスト)に文字が乗りますので
1カット150字以内
どんなに長くても180字以内に収めます。
ここは思い切って
大胆にカットしましょう。
そうやって潔く削ぎ落としていくことで
それでも落とせない大切なものが
次第に見えてきます。
実際にひつじかいが
原稿を分割する手順を公開しています。
くわしくはこちらの記事を参照ください。
ただし
この記事では12等分していますが
それを11に置き換えていただければ
考え方は全く同じです。
こうして出来上がった原稿を
何度も声に出して読んでみましょう。
絵本は原則
読み聞かせを「前提」とする書物です。
自分が読んでみて口が回らないところは
ほかの人にも読みづらいところです。
そんなところには
ていねいに「やすりがけ」をして
すんなりスッキリ読める文章に
磨き上げましょうね。
8 カットごとのシーンを決める
カット割りの原稿が仕上がったら
そのカットにふさわしいシーンを
選定します。
見開きを大きく1枚の絵で使い切るのか
2つ(3つ)のコマ割りとするのか
似たようなシーンが続いていないか
カット全体に躍動感が出ているかどうか
※ストーリーボードを作って
事前に確認しておきましょう。
※ストーリーボードについては
こちらの記事で解説しています。
PDF版のストーリーボードを
添付していますので
必要に応じてダウンロードしてください。
9 シーンを「絵」に仕上げる
ストーリーボードで確認が済んだら
絵コンテ(ミニラフ)
またはラフスケッチに入ります。
ストーリーボードに描いたスケッチは
あくまでもミニチュアですから
拡大すると不自然なこともあります。
どんなに忙しくとも
絵コンテを1~2枚は描いてみることを
おすすめします。
10「絵」に本文を書き加える
提出用の用紙に絵を描いたら
いよいよお話しの本文を書き加えます。
用紙に直接書きつけるか
または
「タイプした原稿を貼り付け」て
仕上げとします。
絵に書き加える本文のバランスも
絵本の大切なポイントです。
実際に本文を書き加えてしまう前に
切り抜いたタイプ原稿を置いてみる
というくらいの慎重さがあっても
いいかもしれませんね。
なお
表紙にはその絵本のタイトルと
そのお話しのイメージ画を描出します。
裏表紙には
必要に応じて
表紙のイメージ画を補完するイラストと
奥付(作者名・制作年月日など)を記載し
これでようやく絵本の宿題は完成です!
お疲れさまでした。
え~と
ひつじかい流の「絵本の書き方講座」
いかがでしたでしょうか?
ここまで聞いても
まだわからないことがあるという場合は
遠慮なく質問してくださいね。
絵(イラスト)についての若干のアドバイス
冒頭でも言いましたが
ひつじかいは
絵本のお話しを専門に書いていますので
「絵本の書き方」といっても
物語
ストーリーが中心になってしまいました。
けれども
絵本を作っている立場にあるものとして
絵本の絵(イラスト)についても
若干のアドバイスはできますので
ここまでお読みくださったあなたに
ひつじかいが聞きかじったアレコレを
お伝えさせていただきますね。
時間があるときにでも
チエックしてみてください。
*お話しも重要な要素ですが
「絵本」と呼ばれるくらいですから
絵の比重が相当に高いといわれています。
(絵がつまらなければお話しそのものが
つまらなく感じられてしまう、とも。)
*絵はたとえ下手でも
人の真似をすることなく
自分の個性(オリジナリティ)を
尊重しましょう。
(ちなみに絵本の業界では
こうした個性(新規性)が求められている
と聞いています。)
*絵本関係者には
「予定調和的な絵では面白くない」
と考えているひとが大勢います。
(絵本の宿題ということではありますが
どうせなら
こういうひとたちを唸らせるような
そんな絵を描いてみましょうね。)
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